年末になると世間を賑わす「有馬記念」の文字。競馬を知らなくても、その言葉だけなら聞いたことがある人は多いかもしれません。有馬記念はとにかく劇的な展開が多く人気のレースなのですが、年間で3000を超える中央競馬(JRA)のレースの中でも、有馬記念のように、特に重要なレースが存在します。

そこで今回は、競馬を始めたばかりの人におすすめの、必ず観ておきたいレースを3つご紹介します。どれも競馬の醍醐味が詰まったレースですよ。
 

競馬版「夏の甲子園」ともいえる「日本ダービー」

まず観てもらいたいのが、5月に行われる日本ダービー(芝2400m、東京競馬場)です。
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競走馬に関わる人にとって、日本ダービーはまさしく憧れの舞台(写真 JRA)


競走馬は2歳の夏以降にデビューし、通常は5~6歳頃まで現役生活を続けるのですが、3歳の夏まではまだまだ体が未完成で、年上の馬にかなわないため、同年齢の馬だけでレースを行います。いわば競走馬の3歳夏が、人間でいう高校卒業の時期というイメージですね。

そして、競走馬にとって高校生活の終盤に当たる3歳の5月末に、「同年齢の中で一番強い馬を決めるレース」として行われるのが日本ダービーです。まだまだ未完成ながら日本一を目指す様子は、さながら「夏の甲子園」のようで、どんな馬も最初は日本ダービー出走を目標にデビューします。

そんな憧れのレースだからこそ、馬にも騎手にも重圧がかかりますし、未完成ゆえのミスも出てしまうもの。日本ダービーにおいて、平常心を失って力を出せなかった馬は数えればキリがありません。その緊張感の中で馬と騎手が力を合わせて戦う姿にダービーの魅力があります。

印象的だったのは2006年の日本ダービー。これまでのレース実績から、優勝の最有力候補は文句なしでメイショウサムソンという馬でした。しかし、メイショウサムソンに騎乗する石橋守騎手は、ベテランながらこれだけの有力馬にダービーで乗るのは初めて。デビュー以来ずっとメイショウサムソンとコンビを組み、馬のことを知り尽くしているとはいえ、正直「プレッシャーに負けてしまうのでは……」という不安がありました。

ところが、メイショウサムソンは見事に優勝。石橋守騎手は重圧に押し潰されるどころか、馬がなるべく消耗せず最小限の力で勝てるよう配慮するほど冷静な騎乗ぶり。もちろん緊張はあったでしょうが、おそらくそれを吹き飛ばす信頼関係が、デビューからずっと一緒に戦ってきたメイショウサムソンとの間にあったんですね。そんな、人馬の絆を見られるレースが日本ダービーです。
 

競馬界のオールスター戦!「有馬記念」

次に紹介するのは、冒頭でも触れた12月末の有馬記念(芝2500m、中山競馬場)です。
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ファン投票で出走馬が決まる有馬記念は、馬券の売り上げも世界最大級のレースです(写真 JRA)


野球やサッカーで大きな盛り上がりを見せる試合のひとつに、オールスターゲームがあります。ファン投票で出場者が決まり、スター選手が共演する一戦は、まさに最高の瞬間ですが、実は競馬にも、そのオールスター戦があるんです。それが有馬記念です。

日本の競馬では、スムーズなレースが行われるよう、1レースの出走頭数にはそれぞれ制限が設けられています。レースに出たい馬の頭数が制限を超えた場合、普通は今までの成績や、レースで獲得した賞金をもとに出走馬が選出されます。

しかし、有馬記念は別。JRAが行う事前のファン投票の結果が最優先で、たとえレースで全然勝てない馬でも、ファンからの投票が多ければ出走できます。そこでついた呼び名が「ドリームレース」。普段ギャンブルとして競馬を楽しむ人も、この時だけは自分が投票した好きな馬を精一杯応援する。それが有馬記念です。

そんなファンの思いが詰まっているからか、有馬記念はとにかく劇的な展開が多いことで有名。不調から復活勝利をあげる馬が出たり、今まで見せたこともないような激走で大波乱を起こす馬がいたり。

忘れられないのは1998年。当時、中学生の私が大好きだったグラスワンダーという馬がその年の有馬記念に出たのですが、ケガや不調でここ一年勝ち星なし。騎手もスタッフも「勝てるかどうかはちょっと……」という状況で、私もさすがに「グラスワンダーは無理だろうな」とあきらめていました。

しかし、勝ったのはグラスワンダー。乗っていた騎手も驚く復活劇で、私は年を越しても、おせち料理を食べても、宿題の書き初めをやっても、まだ実感が湧きませんでした。そういう信じられないドラマを、有馬記念は味わえるのです。
 

一年でもっともレベルの高いレースが見られる「ジャパンカップ」

3つ目に紹介するのは、11月末のジャパンカップ(芝2400m、東京競馬場)です。
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世界各国の競走馬が集結するジャパンカップは、外国人ジョッキーの腕くらべも見どころのひとつ(写真 JRA)


サッカーなどと同じく競馬も、日本で盛んになったのはヨーロッパよりずっと後。そのため、昔から「世界を追い越せ」が日本の競馬の目標でした。

そこで1981年から始まったのが11月のジャパンカップ。これは、世界の一流馬を招待し、日本の競走馬たちと戦わせるというレースで、ヨーロッパやアメリカ、オーストラリアや香港など、様々な国から競走馬が集います。

第1回のジャパンカップは、外国馬たちが上位独占。日本の一流馬が軒並み敗れていく姿に、ファンや競馬関係者は大きなショックを受けたといいます。

しかし、それから約20年経った2000年以降は、ほとんどの年で日本馬が優勝。海外のビッグレースを制した馬が参戦した年もありましたが、そこでも日本馬が勝っています。

このような経緯から、ジャパンカップは国の威信をかけて戦うレースともいえるため、例年、日本からはトップクラスの馬たちがそろって参戦します。そのため一年でもっともハイレベルなレースになることが多く、日本ダービーや有馬記念のようなドラマチックな結末とはまた違った、競馬の凄みを感じることができるのです。

余談ですが、ジャパンカップは外国と日本の競馬文化の違いを知る機会にもなります。たとえばジャパンカップに来る外国馬を見ていると、日本に比べて、馬の世話をするスタッフの中に女性の多いこと。1997年のジャパンカップを勝ったピルサドスキーというイギリスの馬も、世話をしていたのは金髪の女性で、当時の私は何だかピルサドスキーがうらやましく感じたものでした。そんな思わぬ発見ができるのもジャパンカップの魅力です。
 

独特のおもしろさが堪能できる3レース

最後に、今まで紹介したレースとはまた違った、ちょっと変わった楽しみ方ができるレースを紹介しておきます。

コースがおもしろい! 「アイビスサマーダッシュ」(芝1000m、新潟競馬場)
8月に行われるレースで、国内唯一の直線コースが舞台。1000m先のスタート地点からゴールに向かって真っすぐに駆け抜ける姿は迫力満点です。

距離がおもしろい! 「ステイヤーズステークス」(芝3600m、中山競馬場)
12月に行われる国内最長距離の芝レース。「長距離は騎手の腕が出る」といわれており、ポジションや仕掛けどころなど、各ジョッキーの駆け引きを堪能できます。

波乱の結末がおもしろい! 「マーチステークス」(ダート1800m、中山競馬場)
実績に合わせて出走馬にそれぞれ重量が課されるハンディキャップレースで、とにかく「荒れる」ことで有名。一攫千金を狙うのならこのレース!?


以上が、競馬を始めたらぜひ観てもらいたいおすすめのレースです。なお、JRAのホームページから過去に行われたレース映像を見ることもできますので、ぜひこれらのレースをチェックして、そのおもしろさを味わってもらえればと思います。

【関連サイト】
JRAホームページ レーシングカレンダー
JRAホームページ「東京優駿(日本ダービー)」競走成績データ
JRAホームページ「有馬記念」競走成績データ
JRAホームページ「ジャパンカップ」競走成績データ

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