人と馬はまったく違う生き物で、もちろん言葉も通じません。しかし、競馬を見ていると「馬も人も同じなんだな」と感じてしまう瞬間がよくあります。今回は、人と馬の共通点を感じる3つのエピソードをお話しします。

カラスのおかげでレースに勝った馬

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カラスの協力を得て勝ったバランスオブゲームは、その後も息の長い活躍を見せました(写真 JRA)


大事な仕事のプレゼン、あるいは勝負をかけるデートの時、あまりに気合が入り過ぎて空回り……なんて経験のある人は多いのではないでしょうか。競走馬も同じで、レース中に張り切り過ぎて早々とスタミナを切らしてしまったり、走りのフォームがかたくなったりということが多々あります。

2002年3月に行われた弥生賞(芝2000m、中山競馬場)。デビューから4戦目のバランスオブゲームという馬は、とにかく力んでいました。スタートしてからも、レースはまだ前半だというのに後半無視でとにかく思いっきり走ろうとする。完全な気合の入り過ぎです。

しかし、バランスオブゲームはひょんなことから落ち着きを取り戻し、結果、絶妙なスタミナ配分で勝ってしまうのです。空回り気味だったバランスオブゲームを落ち着かせたのは、なんとコース脇にいたカラス。コンビを組んでいた田中勝春騎手によると、「スタート後は力んで仕方なかったが、レース中に馬がカラスを見つけ、それを見ているうちに落ち着いた」とのこと。思わぬものが冷静にさせてくれたんですね。

当時、受験を控えていた私は、このエピソードが妙に心に残りました。テストの朝、不安を払しょくさせようと家で参考書ばかり見ていると、ますます力むばかり。しかし、そんなことは一切関係なく、いつも通りに私の顔をペロペロ舐めてくる犬の姿を見ていたらフッと落ち着いたもの。緊張がとけたり、落ち着きを取り戻したりするきっかけは、馬も人も思わぬところにあるんですね。

なお、バランスオブゲームのように力が入り過ぎてしまう馬は非常に多く、その馬たちに「ちょうど良い加減」を教えていくのがスタッフたちの技でもあるわけです。ですがこの場合は、カラスがその役割を果たしたというわけですね。

続いては、「ある日突然、驚異的に強くなった馬」のエピソードです。