傷害保険の通院保険金は、1日目から保険金が支払われる
傷害保険の通院保険金は、入院を伴わない通院だけでも1日目から支払い対象となります。その意味では使い勝手がよいでしょう。 例えば、交通事故などのケガで入院せずに通院だけでも治療が長引くことは珍しくありません。傷害保険なので病気は対象外ですが、医療保険などと比べると通院保険金の補償は大きな特徴の一つです。しかし何年も前から傷害保険を取り巻く状況は変わってきています。傷害保険の通院保険金について、基本的なところから活用法、今後の動向について解説します。
<目次>
傷害保険の通院保険金の支払いの基本
傷害保険の入院・通院保険金はこれまではたいてい定額の日数払いが中心でした。例えば1日3,000円で10日通院すれば3万円の通院給付という具合です。通院保険金の支払いは、実際に病院に通院した日数が対象ですので、事故の日から180日までのうちの実通院日数90日までが補償されていました。ところが通院給付金の支払い増加などが原因で多くの損保がこの通院給付の限度日数を30日などに変えています(もしくは通院日数に関係なく一時金を支払うタイプ)。
また何度かの改定により、通院保険金の保険料率はかなり引き上げられました。死亡・後遺障害、入院、通院それぞれ別々に保険料率が決められているのですが、最も保険料率が高いのは通院です。入院の保険料率の数倍高いと考えてください。
そのため最近の傷害保険は、通院給付の金額が低く設定されていることが多く、これは安いと思う保険料の設定だと通院の補償がなかったり、保険金額の設定が低いケースもあります。
傷害保険の通院日数が少ないときも診断書がいるの?
傷害保険の通院保険金が1日目から対象なのはいいことですが、金額が少額の場合にはどのように対処するのかというと、10万円以下の保険金請求については診断書の取り付けは不要で対応しているケースが一般的です。傷害保険で補償を低く設定しているようなタイプだとほんの2~3日通院して治療が終わるようなケガの場合、保険金の請求が数千円程度のこともありえます。これでわざわざ診断書をもらっていたら損をするだけです。
そのため診断書の代わりに自己申告で通院日数やケガの状態を記入します(治療状況申告書という保険会社所定の書類)。実際に通院した証明として通院した病院の領収書のコピー等を添付して保険金の請求を行います。
傷害保険の通院先の病院が複数あったらどう請求する?
ケガでも医療機関を転院したりすると、通院先の病院が一時的に2カ所などになるケースがあります。このように別々の病院で通院日が重複しているときには、2倍に保険金が支払われることはありません。例えばA病院に5日通院、B整形外科10日通院したとします。通院の給付が1日3000円なら、『(3000円×5日)+(3000円×10日)=4万5000円』が通院保険金です(実通院日数15日)。通院給付を定められた日額で支払う場合はこのように計算します。
仮にA病院、B整形外科への通院日で重複している通院日(AとB両方に通院した日)が2日あれば、別々にカウントしませんので、総通院日数は13日で『3万9000円』が通院給付となります。
傷害保険の通院保険金のポイントと注意点
■ギブスをしている期間は通院とみなす傷害保険でケガでギブスをするケースでは、ギブスをしている期間を通院しているものとみなします。以前はギブスも自分で容易に取り外しできるものだと対象にならないことがあり、基準が曖昧なところがありました。2013年10月の主要損保の改定で対象となるギブスが保険約款に明記されました。
■70歳以上向けはプランが別のことも
また70歳以上の人(通院が長引くケースが多いため)のプランを対象に、通院の限度日数を90日から30日に減らしたり、通院の日額の支払をやめて一時金のみ支払うかたちにしているところも増えています。たいてい70歳以上の方については各社70歳未満の人と分けて専用のプランを設けています。
■通院限度日数の設定も厳しく
最近は年齢に関係なく日額払いの場合には、実通院限度日数を30日にしていたりします。通院部分の保険料の値上げもあって傷害保険の通院の補償については以前よりも魅力が下がっている状況です。仮に通院給付の金額を引き上げると保険料も高くなるため、なかなか難しいところです。
傷害保険の通院の補償の知っておきたいポイント
傷害保険の注意点として、ケガをした部位によっては通院保険金をあまり受け取れないケースがあります。例えばケガで肋骨にひびが入ったようなケース。こうなると病院に通院するというよりは、湿布や薬などをもらって自宅で安静にするということも多いでしょう。このようなケースではそんなに病院へ通院はしません。しかも肋骨のケガではギブスもつけませんから、通院ともみなされません。
つまり、あまり通院せず、入院や手術もないと、結果としてあまり保険金が支払われない(通院日数などが少ないため)のです。ケガによってはこのようなことも考えられますので、覚えておいてください。
傷害保険の通院給付の今度の動向と考え方
以前であれば傷害保険の通院給付もコストの割に使い勝手が良かったのですが、その状況も変わりつつあります。予算が合わないなら、通院の補償はあえてつけないというのも一つの考え方です。例えば通院給付が1日1,000円だとして、限度日数が30日だと最高でも3万円です。商品上の魅せ方として代わりに入院給付の金額を引き上げていることもあるようです。この辺りは各自の判断ということになるでしょう。傷害保険の通院給付というテーマで解説していますが、例えば、自転車保険なども傷害保険の一種なのでケガの補償の状況は同じです。
もしも自分や家族のケガによる通院などの補償が心配なら、「自動車保険」に付帯されている人身傷害補償の範囲を広げる方法があります。自動車事故や交通事故などに限定されますが、自動車保険に加入している人は検討してみてください。
保険金の支払いは定額で日額払いするのではなく実費補償なのがポイントです。多くの損保で契約車両に乗っていない場合の歩行中や自転車搭乗中の自動車事故まで対象です。
またごく一部の損保で交通乗用具(いわゆる乗り物)に搭乗中の事故まで対象を広げているものもあります。このようなケースだと自動車事故だけでなく、自転車の単独事故などまでカバーされます。高齢者や子どもなどが自転車によく乗るなら検討してみるといいでしょう。
交通乗用具の範疇は意外と広く車やバイク、自転車だけでなく電車や飛行機、船舶、乳母車、エスカレーターなどまで対象になっています。ケガ全般ではありませんが、一考の余地のある補償です。
傷害保険に通院給付まで付帯するかどうかは補償と予算のバランスを考えて検討してみてください。実際にケガをしたら通院給付はいくら支払われるのか、そもそも預貯金で十分カバーできる範囲ならあえて拘らない選択もあるでしょう。
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