洗濯物を干す場所は最初のプランニングから考慮して
戸建て住宅の間取りを考えるとき、洗濯物干し場の位置はどこが適しているでしょうか。今では洗濯乾燥機も出回り、浴室に乾燥機がついているお宅も増えました。「うちは100%乾燥機」という人もいるかもしれませんが、「できるだけ自然乾燥したい」と考えている人も多いと思います。
「洗濯物を干す場所」はプランニング中にそれほど重視されないかもしれませんが、計画をおざなりにすれば、日中家の中が洗濯物だらけになってしまい、部屋干しのニオイが気になったり、なかなか乾かず洗濯物がずっとぶら下がったままになるなど、頭を悩ますタネになりかねません。
<目次>
洗濯物を干す場所の条件は?
洗濯物はできるだけ自然乾燥したい人にとって、洗濯物干し場の理想的な位置は「洗濯機から近い」「干しやすい&取り込みやすい」「乾きやすい」「じゃまにならない」「雨除けがある」などだと思います。これらの条件についてもう少し掘り下げて考えてみましょう。洗濯機置き場と同じフロアが鉄則
まず洗濯物干し場をどのフロアに設けるのがよいでしょうか。「ベランダのある2階でしょ」と思われるかもしれませんが、洗濯機置き場のある階と同じ階に設けるのが鉄則です。洗濯機が1階にあるなら洗濯物干し場も1階に、洗濯機が2階にあるなら洗濯物干し場も2階に、というふうにです。なぜなら洗濯物を抱えて階段の上り下りをするのは大変重労働であり、かつ足を滑らせて怪我をする危険性があるからです。階段からの転落事故は家庭内事故の事例として数多く報告されています。毎日のことですから、大きなカゴを抱えて階段の上り下りをしなくてすむ動線を考えましょう。
洗濯物を干す場所には庇がお勧め
最近は浴室、洗面脱衣室などの水回りを2階に作っている間取りも多く見かけます。そこに洗濯機を置く場合は同フロアの2階にベランダを設け、そこに干すというケースが一般的だと思います。向きは日照時間の長い南向きがお勧めですが、東向きでも西向きでも風が通るようにしておけばよいでしょう。2階のベランダを物干し場にする際にお勧めしたいのは、洗濯物干し場を覆う屋根または庇をつけることです。雪の多い地方だと当たり前の光景ですが、関東以南では庇のないベランダに洗濯物を干すケースが多いと思います。しかし、庇や屋根のかかった洗濯物干し場は「今日の天気微妙だな……」という時でも安心して干せます。庇や屋根があれば、ちょっとしたモノも置ける半屋外空間になり、洗濯を干す以外にも使い勝手が大変よくなります。
1階にはデッキスペースを確保すれば、洗濯物を干せる
もし1階に洗濯機置き場があるなら、洗濯物を干すスペースは1階に確保しましょう。南側にある庭の日当たりのよい一角に物干し台を設置しても良いですが、せっかくならウッドデッキを設け、そこに光を通すプラスチックの一種であるポリカーボネート板で屋根をかけてみてはいかがでしょうか。ポリカーボネート板の屋根の下に、可動式のオーニングを合わせれば、夏はオーニングを開いて日射を遮り、冬はオーニングを畳んでお日様をいっぱい取り込むなど、季節に合わせた使い方ができます。
寒冷地の洗濯物干し場を参考に
雪が多く降る地域では、洗濯物干し場になんらかの対策を施している家が多く、軒を長く出して洗濯物干し場の天井をすっぽり覆う、または庇を設けるほかに、屋根だけでなく側面もポリカーボネート板などで囲い、雨や雪が吹き込まない造りにしている家も多く見かけます。また、1階に洗濯物干し場を設ける場合は住戸の中に専用の洗濯物干しスペースを設けることもあります。洗濯物を干すスペースは、家事室を広めにとりそこに干す方法、廊下と洗濯物干し場を兼用する方法など、いろいろ考えられます。
家事室に洗濯物干しスペースを作る
家事室と洗濯物干し場を兼用する場合は、そのスペースを家の北側に設けざるを得ないケースも出てくると思います。その際に「乾くのだろうか」「じめじめしないだろうか」と心配する声も聞きますが、「風の流れをつくる」ことを念頭に置き、計画してください。同じ室内に窓を2か所、もしくは給気口と換気口を設け、風の出入り口を作ります。大きな換気扇をつけたり、サーキュレーターを併用したり、室内の仕上げに吸湿作用のある珪藻土を用いるなど工夫して、湿気がこもらないようにしましょう。
廊下は風が抜け、乾きが良いため兼用する
省スペースで、と考えた時には、洗面脱衣所やキッチンの近くに、あまり人が通り抜けない廊下があればそこを洗濯物干し場として利用する方法もあります。廊下はある程度の距離(長さ)があるので、廊下幅をやや広く取り、廊下の片側の天井または壁に物干しざおを掛ける金具を取り付けます。廊下は意外と風が抜けるため、乾きがよくなります。こういった洗濯物を干す場所の知恵は雪の多い地域の方が進んでいます。雪が降らない地域でも、洗濯物は自然乾燥したい人、普段忙しい人、洗濯物をとりこむ時間がマチマチな人には参考になると思います。洗濯は毎日することなので、ぜひ住宅の間取りを計画する時から検討材料に入れておくようにしてください。
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