おっぱいの断乳 ・卒乳は、母乳育児ママ共通の悩み

 
母乳のやめどきは?多くのママが卒乳や断乳のタイミングややり方について悩む

母乳のやめどきは?多くのママが卒乳や断乳のタイミングややり方について悩む


赤ちゃんを母乳のみで育てている完全母乳育児のお母さんでも、母乳とミルクを併用しているお母さんでも、共通の大きな関心ごとが、「断乳」「卒乳」です。健康面や母子の愛着関係の構築などからも母乳のメリットが指摘される中で、期間の長短にかかわらず、頑張って母乳育児を続けてきたお母さんは、その“やめ時”や“方法”という課題を前に、大きな壁にぶつかったような気持ちになることも少なくありません。

助産師として病院勤務をしながら、赤ちゃんを育てる母親向けの産後ヨガ教室を通してたくさんのお母さんたちと接し、その悩みを受け止めてきた内田綾子さんに、「断乳・卒乳」についてお話を伺いました。  

母乳のやめどき……なぜ、断乳・卒乳で悩むのか

卒乳・断乳の時期や方法についてお話を聞いた、産後の体調、体型回復や、健康維持を目的にしたヨガクラスの講師を務める内田綾子助産師(左端)

卒乳・断乳の時期や方法についてお話を聞いた、産後の体調、体型回復や、健康維持を目的にしたヨガクラスの講師を務める内田綾子助産師(左端)

生後半年ぐらいまでの赤ちゃんは1日に取る栄養の大部分を、母乳やミルクから得ています。個人差は大きいものの、10ヵ月~1歳半になるころには、離乳食が1日のうち2回、3回と進み、「飲む」ことに「食べる」ことが加わっていきます。しかし、回数や量が減っても、母乳を飲み続けてきた赤ちゃんにとっては、栄養面だけでは割り切れない「おっぱいを飲むことへの思い」があります。

そういった流れの中で、お母さんたちは「おっぱいのやめ時」である断乳・卒乳について、頭を悩ませます。それは、仕事再開だったり、夫や両親など身近な人からの「もう、おっぱいは必要ないんじゃない?」などの言葉だったり、健診などで医師や保健師に「そろそろやめてもいいかもね」などと言われたことだったりと、きっかけは色々です。一方で、「やめなくてもいい」というアドバイスもあります。お母さんたちは、「やめた方がいいのか」「やめなくてもいいのか」「やめたらいけないのか」といった様々な思いを抱えます。肌と肌を合わせて母乳を与え続けてきたお母さんならではの思いでしょう。

内田さんは、ご自身も現在である小学生のお子さんへの母乳育児を経験しながら、このようなお母さんたちの戸惑いを数えきれないほど受け止めてきました。
 

断乳・卒乳に対する戸惑いや悩みの背景

「お母さん自身がまだ母乳育児をやめたくない場合、夫や両親など身近な存在から『やめた方がいいのでは』と言われると、自分が子どもによいと思ってやっていることが、子どものためになっていないのではないか、と不安になる方がいます」と内田さん。「以前の母子手帳に存在していた“断乳”という言葉がなくなり、表向きには“1歳までに離乳を完了するための”断乳指導もなくなりました。それでも、健診や予防接種の際に、医師や保健師、助産師などから授乳をとがめられるケースもあります」。

断乳・卒乳という言葉が存在する中で、お母さんたちの心の中には、置かれた環境は様々でも、できる限り、一般的に定義されている「親の判断でおっぱいをやめる断乳」でなく、「子ども自身がおっぱいを必要としなくなって自然に離れていく卒乳」を望む気持ちも見え隠れするようです。
 

断乳・卒乳の時期の一般的な目安

卒乳にも、お母さんが疲れた時や授乳を辛いと感じる時にやめ、できる範囲で授乳する“部分的卒乳”や、徐々に回数を減らして子どもがおっぱいから離れていく方向に持っていく“計画的卒乳”がありますが、これらの言葉の定義も、卒乳や断乳の定義と同様、医療や保健の仕事に携わる人たちの中でも統一されていない面があるそうです。

また、伝統的に「1歳を過ぎたらおっぱいへの執着が強くなるから、その前にやめた方が楽」「歩き始めて自立の心が芽生えたり、離乳食を3食食べるようになったら切り替え時」など広く言われる目安も存在しています。夜中に泣いて起きるお子さんの場合には、「授乳をやめれば夜中起きなくなる」という先輩ママなどのアドバイスに解決策を求めることも少なくありません。仕事再開を控えている場合は、夜泣きをなくすためや、昼間に授乳できないことによる搾乳の手間や乳腺トラブル予防のためなどに、断乳をしてから仕事復帰というケースも多いようです。
 

卒乳・断乳のタイミング目安と実際

しかし、目安はあくまでも目安。例えば、「授乳をやめて仕事復帰したのに、お子さんが夜中に泣くことが増えたというお母さんもいます。母乳を与えるか与えないかにかかわらず、環境の大きな変化に対して、泣くということで気持ちの折り合いをつける時期があるお子さんもいるでしょう。そういう場合には、母乳が母子双方の心の安定に役立つこともあるかもしれません」と内田さん。科学的根拠に基づいて母乳育児支援活動をする「NPO法人 日本ラクテーション・コンサルタント協会」の報告によると、母乳を続けることには「アレルギーや湿疹、感染症などのリスクが低くなる」という利点もあるそうです。

また、母乳をやめれば心配事は完全に解決するのでしょうか? 内田さんは「心配に思っていることが、母乳をやめることで完全に解決しないかもしれません。それでも『この時期をきっかけに母乳をやめよう』とお母さんが感じたら、その時がやめ時なのかもしれません」と話します。
 

断乳・卒乳の時期を決めるのはお母さんだけど……

内田さんは「やめるか、続けるかを決定するのは、お子さんの様子を一番よく見ているお母さんが決めてよいこと」とした上で「それは、お母さんが責任を負うということではありません」と説明します。それはどういうことなのでしょうか?

母乳育児に限らず、日々の生活の中で優先事項は人によって様々。だからこそ「お母さんが納得した上でおっぱいをおしまいにするのであれば、どんな時期のどんな形でも、“私とこの子の母乳のおしまいの形”として物語ができているのです」と内田さん。そういった考えのもとに、内田さんは、続けるにしてもやめるにしても、お母さんの選択を支持し、その選択に沿って今後の母子の生活がスムーズに進むようにアドバイスをしているそうです。「子どもが自らおっぱいから離れていく“卒乳”をひたすら待ち、それが子どもにとって最善だと縛られてしまうようなことがあれば、それは、『1歳までに断乳するべき』と言われていた時代と同じことになってしまうのでは」と心配します。
 

断乳・卒乳の際、母子ともにつらい状況を作らないために

「子どもにとって母乳は、いつまでも一緒にいたい大好きなお友だちのような存在。そんなお友だちが突然いなくなってしまうのはつらいことなので、相手が赤ちゃんや小さなお子さんでも、こちらの気持ちを伝え、やめることを説明することは大切になってくるでしょう」。一方で、「『もうすぐやめるからね』『飲むのはもっと少なくして』と何度もお別れの可能性を口にすると、お子さんも戸惑います」。肌を合わせて与え、与えられてきた母乳をおしまいにするのは、母子ともに少なからずの切なさがあるものですが、やめると決めたら一貫した姿勢でお子さんに接してあげることが「成長した自分をみんなに迎え入れられたような誇らしさを、お子さんが感じることにもつながります」とアドバイスします。

「個人差の大きいことだから、たくさん悩んで大丈夫。それぞれの物語を作りましょう」。この言葉に、母乳育児に対する内田さんの思いが集約されます。身近な家族やアドバイスをする立場にいる方々が、お母さんの選択を尊重し、共に考え、静かに見守ることも、とても重要なのではないでしょうか。

内田綾子助産師より
【参考文献】
「卒乳-おっぱいはいつまで」日本母乳の会 2004
「母乳育児スタンダード」日本ラクテーション・コンサルタント協会 2012
 

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※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。