Q:『ドリアン・グレイ』をはじめ、数々の衝撃作を世に送り出してきた奇才、マシュー・ボーン。素顔の彼はどんな方なのでしょう。
リチャード>とても静かで、誠実で、謙虚で、正直な人です。心はとても『ドリアン・グレイ』過去公演写真より
大貫>まさしくリチャードが言う通りで、しっかり根がはってて動かないのに、何か柔らかいものに満たされてる。人に触るとき、喋るとき、柔らかい感じがするんです。一緒にいると、不思議と包まれてるような気分になります。
Q:長年共に仕事をしてきて、リチャードさんがマシューさんから得たものとは?
リチャード>若い頃の僕に与えてくれた自信です。19歳でカンパニーに入って、アンサンブルとしてスタートしました。当時『ザ・カー・マン』で初めてロサンゼルスに行ったんですけど、ジャック・ニコルソンなど多くの著名人が観に来たのを覚えています。たくさんの経験豊富な方たちと仕事をさせてくれて、いろんな可能性を引き出してくれた。なかでも『ドリアン・グレイ』は一緒に作ったということもあり、僕にとって非常に特別な作品です。Q:大貫さんがこの作品を経て目指すものとは?
大貫>稽古から本番まで、とりあえず『ドリアン・グレイ』のためだけに生きてみようと思っています。それくらいの気持ちで一年間過ごしてきたし、だからあまり先のことは考えてないですね。とにかくこの舞台ですべてを出し切りたい。そうする内に、気づいたら自然と先につながっているんじゃないかなって気がします。Q:最後に、ドリアン・グレイ役への意気込みをお聞かせください。
大貫>ここまで準備をして、これだけ想い入れのある作品は今までない。ダンスという自分を生かせるジャンルで本当の意味で光があたったような気がしていて、ここでやり切りたいと思っています。覚悟してきた時間も今までと全然違うので、絶対にいいものになると思う。たった4回しかないので、肉体的にも精神的にも“ここで命が尽きてしまってもいい!”というくらいの勢いでやります。最後のステージでボロボロになるくらいの気持ちで臨みたいと思っています。リチャード>この役が危険なのは、キャラクターのことが好きになれないところ。ショーではキャラクターが愛されることが大切だけど、すごくギリギリのところなんですよね。アンンチヒーローなので、彼を好きになってくれるか、彼に同情してくれるか、日本のお客さんがどう反応してくれるかが気がかりです。ただ観に来てくれた方には、素晴らしい経験を与えたいと思っています。エンターテイメント性に富んだ、素晴らしいショーをお見せしたいと思います。
大貫勇輔(左)とリチャード・ウィンザー(右)。公演紹介イベントにて。