Q:オリジナルキャストのリチャードさんと大貫さん、日英Wキャストで上演されるマシュー・ボーンの『ドリアン・グレイ』。大貫さんはドリアン・グレイ役のため、ロンドンまでオーディションを受けに行かれたそうですね。
大貫>オーディションの話を聞いて、何が何でもやりたいと思い、ひとり『ドリアン・グレイ』過去公演写真より
リチャード>振付けしたのは『ドリアン・グレイ』の一部でした。作品の流れの中で身体性が生まれ、音楽がそこに伴ってくる。とてもドラマチックなシーンで、それを彼がどうやって解釈し、どう表現するかをマシューは見たかったんだと思います。僕が伝えたのは、ドリアン・グレイを演じるにあたり、何をしなければいけないかということ。例えばダイナミックさであったり、ダークな面であったり……。勇輔がこの役を掴むために、できる限りのサポートをしたつもりです。
大貫>リチャードのサポートは僕も凄く感じましたね。“プリンシパルの人って普通はこんなに親切じゃないよな”っていうくらい丁寧に教えてくださって。それに応えたいという気持ちもあって、リチャードとエタが何を求めてるのか、何を表現すればいいのかを強く意識して踊りました。
リチャード>ステージ上でオーディションができたのは彼にとって幸運で、舞台に立つとやっぱり全然違うんですよね。舞台上の勇輔はとても居心地が良さそうで、理解力もあり、動きも非常に早く会得していました。『ドリアン・グレイ』のダンスはいわゆるコンテンポラリーでもないし、バレエでもない、全く新しい動きなんです。もちろん振付けはあるけれど、決まった型はなく、人間を表現する動きになっている。普通のダンスとは全然違う身体性を求められるんです。でも、勇輔はとても上手に受け止めてくれたと思います。
Q:オリジナルキャストと振付家を前にオーディションを受けるのは相当な緊張感があったのでは?
大貫>確かに緊張感はありましたけど、それより“絶対やりたい!”という想いの方が強かったですね。全部で三曲踊ったんですけど、気持ちが先走ったせいか、一曲目で情熱的に踊りすぎてしまって……。マシューに“もしかしたら君はバジル役の方がいいかもしれない。ちょっとパッショナブルすぎる”と言われて、おっといけない、抑えなければと(笑)。二曲目はドリアン・グレイがモデルに目覚めるシーンだったので、少し雰囲気を変えて、なるべくリキまないように意識したんです。そうしたらマシューが“こういうニュアンスもできるんだ、じゃあ君はやっぱりドリアン・グレイ役だね”と言ってくださって……。リチャード>勇輔は役作りに対する姿勢も素晴らしく、非常に存在感があって、この役にぴったりだと思う。勇輔がやることになって、僕もとてもうれしいですね。本番までまだまだ良くなると思うし、それが楽しみです。
大貫>あのオーディション以来、一年かけて筋トレしてビルドアップしてきました。というのも、初めてリチャードに会ったとき、凄く大きい人だなと思って……。身体から発する匂いだったり、肉体から醸し出されるものがあって、僕もこういうふうになりたいと思ったんです。今回一緒の役をやる訳だけど、“日本人だから線が細くてもしょうがない”と言われたくないというのもありましたし、できる限りの努力をしようと思ったんです。
リチャード>確かに凄く大きくなりましたよね。存在感がより強くなって、人としても大きく見える。だから、舞台に立っても映えるんじゃないかな。
大貫勇輔(左)とリチャード・ウィンザー(右)。舞台紹介イベントにて