労務管理/労務リスク管理

健康診断は企業の安全配慮義務の基本!(2ページ目)

「健康診断」、皆様の企業でも定期に実施されておられることでしょう。健康診断の実施は、従業員に対する企業の安全配慮義務の基本です。実施後の措置は適切にできているでしょうか。自社で実施している健康診断を効果あるものにするため、今回の記事で確認しておきましょう。

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド

「一般健康診断」にも様々なメニューがある!

雇入れ時の健康診断の検査項目は省略できませんので注意してください

雇入れ時の健康診断の検査項目は省略できませんので注意してください

従業員に対して行う「一般健康診断」はさらに、次の1~5に細分化されます。毎年の健康診断以外にも様々な健康診断メニューがあることが分かりますね。企業実務ではまずは次の1と2の理解がポイントです。

1.雇入れ時の健康診断
常時
使用する従業員を採用する際に義務づけされている健康診断です。意外と実施していない中小企業が多いようです。企業の構成メンバーになる際、身体の状況を把握しておくことは基本的な労務管理。具体的企業実務では、入社前3月以内に実施した健康診断書の提出を求めることで対応することもできます(健康診断受診後3月を経過しない者の採用で認められている方法です)。

■検査項目は次のとおり(項目の省略はできません)
・既往歴及び業務歴の調査
・自覚症状及び他覚症状の有無の検査
・身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
・胸部エックス線検査
・血圧の測定
・貧血検査・肝機能検査・血中脂質検査・血糖検査
・尿検査
・心電図検査

2.定期健康診断
これが皆さんによく知られている健康診断です。企業で毎年1年以内ごとに1回実施します。定期に実施することで従業員の身体の状況データーを記録、実施後適切な措置が必要です。

■検査項目
上記1.雇入れ時の健康診断と同様です(胸部エックス線検査には、さらにかくたん検査が加わります)。但し、いくつかの項目は厚生労働大臣の定める基準により、医師が必要でないと認める項目は省略することができる、ことになっているのが大きな違いです。

3.特定業務従事者の健康診断
一定の有害業務に常時従事する従業員に対して、その配置換え及び6ヶ月以内ごとに1回(胸部エックス線検査及びかくたん検査は1年以内ごとに1回)上記定期健康診断の検査項目の実施義務があります。有害業務とは、著しく暑熱、寒冷な業務、有害放射線業務、著しい粉末飛散場所での業務、著しい振動業務、重激な業務、強烈な振動業務、強烈な騒音場所業務、坑内業務、有害物取扱い業務、病原体汚染の恐れが著しい業務などを言います。

なお、その他注意すべきは深夜業を含む業務従事者です。実は深夜業務はこの特定業務とされているのです。受診忘れはありませんか?

4.海外派遣従業員の健康診断
従業員を海外に6ヶ月以上派遣しようとするとき、6ヶ月以上派遣した従業員を国内業務に従事させるときに実施する健康診断です。業務命令で海外で仕事をする場合は、転籍、出向、出張などが考えられますね。健康診断の項目は、医師が必要と認める項目について、前記の定期健康診断項目だけでなく、腹部画像検査、血液中の尿酸量の検査、B型肝炎ウイルス抗体検査、ABO式・Rh式血液型検査、糞便塗抹検査があります。

5.給食従業員の検便
企業に付属する食堂、炊事場で給食業務に従事する従業員には検便による健康診断の実施義務があります。採用時、給食業務に配置替えの際に実施します。

指定の健康診断を受診しない従業員の取り扱いは?

前記のとおり従業員も健康診断の受診義務があります。では企業で指定した健康診断を受けない場合はどうなるのでしょう。その場合は、自身で受けた他の医師、歯科医師の健康診断の結果証明書を提出してもよいことになっています。

忙しいなどの理由で受診を拒否する従業員も見受けられますね。その場合は、自身でうけた結果証明書を提出させるようにしてください。就業規則などに受診義務があることを明確に記載しておくとよいでしょう。受診拒否は業務命令違反として処分をすることも明記しておくと効果的です。

一般健康診断の受診対象の従業員の範囲は?

受診対象者の範囲は悩むところですね。前記の一般健康診断の中、雇入れ時の健康診断、定期健康診断、特定業務従事者の健康診断の対象者は、「常時使用する従業員」となっています。この「常時」とは、次の1及び2の要件を満たす場合です。

1.期間の定めがない者
有期契約の従業員でなければ常時になります。なお有期契約従業員でも1年以上使用されることが予定されていれば常時になります(特定業務従事者は6ヶ月以上使用予定であれば常時になります)。

2.1週間の労働時間数が、その事業場の同種業務に従事する従業員の4分の3以上である者
同種業務の従業員の労働時間が1週40時間の場合、30時間以上の労働時間の者であれば受診対象者となります。このように短時間勤務者でも該当することがありますので注意しておきましょう。なお補足ですが、2分の1以上であるもの者にも受診させることが望ましいとの通達が国から出ています。2分の1以上の者にも範囲を広げることで健康管理の充実をお勧めします。

健康診断費用の負担は、企業側・従業員側?

健康診断の実施義務は法令により義務付けされていますから当然に企業が負担すべきです。

次のページでは、健康診断実施時間の賃金について解説しています。
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