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Noism芸術監督・金森穣インタビュー 後編

新潟を拠点に活動するダンスカンパニー・Noism1が、この春待望の新作『ZA-ZA~祈りと欲望の間に』を発表! 前回に引き続き、ここでは芸術監督・演出振付家の金森穣さんへのインタビュー後編をお届けします!

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

バレエガイド

Q:第2部 『囚われの女王』は、井関佐和子さんのソロ作品。10分間の作品をたったひとりで踊りきるというのは、舞踊家にとっても振付家にとっても大変な挑戦なのでは?

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金森穣氏 撮影:篠山紀信

これは“今の井関佐和子”だから構想しているソロです。今の彼女が持ってる色んな側面の全てを、この10分に出したい。

音楽はシベリウスの『囚われの女王』を使いますが、これはフィンランドの詩に基づいて書かれた曲で、4人の登場人物が出て来る話です。その4人のキャラクターを、ひとりで踊ります。だからある種の演劇性というか、表現として演じる部分が求められる。それは、技術的にも表現的にもここまで成熟した今の佐和子だからできるもの。

同時に、身体的に激しいことができるのもさほど長くはない、本当に今の彼女が全て出るようなものを作りたいという課題があって……。井関佐和子という舞踊家の精神を含めた身体をどこまで解放できるか。本当に大変なソロだし、佐和子にしか踊れない、見応えのあるものになると思う。だから、アンダー(代役)は付けていません。もし彼女が怪我でもしたら、この作品は上演しないでしょう。

Q:井関さんの踊りを観ていると、舞台の度に進化を遂げていて、どこまで成熟するのか怖ろしくも感じます。

彼女はまだまだ行けますよ。さらに、このソロでまた上に行くと思います。それは、自分にとっての課題でもある。どんどん上に行くから、追いつけ追い越せじゃないけど、共に新しいことにチャレンジして高みを目指したい。

今の佐和子には、危機感、飢餓感がある。彼女の実力がこの国で正当に評価されているとは思ってはいなくて、ただそれがNoismを取りまく現状であり、日本の舞踊界を取りまく現状でもある。そういう意味でも、彼女は社会に対しての飢えがちょっと他の舞踊家たちとは違う。

年齢的にも、あと何回舞台に立てるか、何回踊れるかと考える時期にこれから差しかかる。佐和子自身ができることと、差し迫ってる時間が拮抗してるから、それが観る者の心を掴むというか……。だからこそ“この人、本当にこの瞬間に燃えてるんだな”っていうのが、観る側に伝わるんでしょうね。
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Noism1見世物小屋シリーズ第3弾『Nameless Voice~水の庭、砂の家』演出振付:金森穣(2012) 撮影:篠山紀信


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