立体曼荼羅ボロブドゥール1. 階段ピラミッド
中央下部が「隠された基壇」。この南東の角を除いて、本来の基壇はブロックで覆われている。左右の階段の周辺を見ると、どのようにブロックが積み上げられているのかよくわかる
「隠された基壇」拡大図
ボロブドゥールは半円形の丘をおよそ200万個の安山岩ブロックで覆った遺跡。基壇の上に5層の方形(四角形)壇と3層の円壇を乗せた9層の階段ピラミッドだ。
そして、基壇はこの世であり人間の欲望渦巻く「欲界」、方形壇は欲望を振り払ったものの物質=色世界にとらわれた「色(しき)界」、円壇は欲や色から解脱(げだつ)した悟りの世界である「無色界」という仏教の3界を示すといわれている。その様子は各層を歩くとよくわかる。
右が飲酒で病を患った男と、それを看病する家族。左下には酒壺が見える
基壇の中で現在見学できるのはこの「隠された基壇」と呼ばれる南東の角のみ。ピラミッドの重さに耐えられないと判断されたためか途中で設計を変更したようで、基壇のほとんどはブロックで覆われている。
立体曼荼羅ボロブドゥール2. 悟りの世界
第一回廊の様子。右の主壁のレリーフの上段が仏伝図で、下段と左側の側壁がブッダの前世や外伝的な物語を描いたジャータカとアヴァダーナ
上段が仏伝図の四門出遊(しもんしゅつゆう)のレリーフ。シッダールタが城を出る際、東門で老人、南門で病人、西門で死人、北門で僧と出会い、出家を決意する。中央がシッダールタで左端が老人だ
同様に、第一回廊下段のレリーフにはブッダの前世、第二~第三回廊には善財童子の巡礼物語、第四回廊には普賢菩薩の教えが描かれている。善財童子とは、文殊菩薩の説法で仏教への帰依を決め、53人の賢者を巡礼したのち普賢菩薩に導かれて悟りに至った仏教僧だ。ボロブドゥールのレリーフは計1,460面に及ぶが、悟りに至る道を描いている点が特徴だ。
第四回廊の上は「無色界」を表す3層の円壇だ。最下層の第一円壇は四角の角を丸くしたようないびつな円形で、最上段の第三円壇で真円になっている。上段に行くほど世界が真理に迫っている様子を表現しているのだろう。
色界の露壇から無色界の3層円壇と大ストゥーパを眺める。釣鐘型の小ストゥーパ内には釈迦如来坐像が収められている(欠損しているものもある)
円壇に置かれているのは72基の釣鐘型の小ストゥーパだ。小ストゥーパには格子窓があり、中を覗くと真理を示す転法輪印を結んだ釈迦如来坐像が置かれている。その表情は透明で曇りがない。
そしてすべての中心に立つのが大ストゥーパだ。小ストゥーパは上段に行くほど格子窓が小さくなるのだが、このストゥーパには窓がない。内部空間はあるようだが空洞で、仏像は収められていないらしい。一説ではこれによって大乗仏教の「空(くう)」の思想を示しているともいわれる。
ボロブドゥールは世界の在り方・私の在り方を示した立体曼荼羅であり、悟りまでの過程を示した経典でもある――そのように証明されているわけではないが、個人的には強くそう感じた。