マネジメント/ピーター・ドラッカーとは

経営管理の基本の4つの機能

ドラッカーは企業には4つの機能が必要だと言います。「マーケティング」と「イノベーション」の2つが、企業が持つべき基本機能です。企業は人が集まる組織ですから経営管理的機能が必要です。そして、企業にとって重要な4つ目の機能が、利益測定のための利益という機能なのです。

執筆者:國貞 克則

経営管理の基本の4つの機能

経営管理の基本の4つの機能

ドラッカーは企業の目的の定義はひとつしかない。それは「顧客を創造すること」だと言いました(「顧客の創造」とは?ドラッカーに学ぶ企業の第一目的参照)。では、この「顧客創造」という目的を果たすために企業には何が必要なのでしょうか。
   

企業に必要な4つの機能

経営管理の基本顧客満足

顧客のことを知りつくす

ドラッカーは企業には4つの機能が必要だと言います。まずはマーケティング機能とイノベーション機能です。企業の目的ある「顧客創造」をしようと思えば、顧客のことを知り尽くすというマーケティング機能がまず必要です。しかし、マーケティング機能だけでは不十分です。イノベーション機能が必要です。

マーケティングだのイノベーションだのと言われると、話が学術的になったと思われるかもしれませんが、このことは現場の仕事を思い浮かべればすぐに理解できます。

例えば、あなたの部下に仕事を依頼し、部下はあなたの依頼通りに仕事をしたとします。その部下は良い部下ではありますが優秀な部下とは言えません。現場のことは上司より部下の方がよくしっています。部下は上司の意を汲んで、上司が依頼している以上のアウトプットを出さなければ、どこの組織でも優秀だとは言われません。

これを企業に当てはめて考えてみてください。顧客の要求を満たすことは、部下が上司の言う通りに仕事をすることと同じです。企業は自社の専門分野においては、顧客以上の情報や知識や経験を持っています。顧客が望む以上のイノベーションを起こしてこそ、本来の企業の仕事をしたということになるのです。

3つ目の機能は経営管理的機能です。企業は人が集まって仕事をします。生産性をあげるには経営管理的機能が不可欠です。この経営管理的機能の経済的側面を生産性と言います。
 

企業は売上や利益をコントロールできない

4つ目の機能は成果測定のための利益の機能です。皆さんの会社でも売上目標とか利益目標を定めているかもしれませんが、これらの目標はよく考えてみればナンセンスです。なぜなら企業は売上をコントロールできないからです。企業が懇願しようが恫喝しようが、顧客は自分が欲しくないものは買わないのです。売上をコントロールするのは顧客です。売上がコントロールできないのですから、その結果である利益もコントロールできません。

企業がコントロールできるのは、企業内部の「マーケティング機能」「イノベーション機能」「経営管理的機能」の3つの機能だけです。利益が出てない企業というのは、これら3つの機能のどれかがうまく機能してないのです。そして、利益という成果測定のための機能があるから、どこが悪いかのフィードバック分析が可能になるのです。
 

利益は企業存続のための条件である

ただ、ドラッカーは面白いことを言います。企業は利益をコントロールすることはできないが、天使のような利益にまったく興味のない人が経営者になっても、利益には重大な関心を示さなればならないと言います。なぜなら、利益は企業存続のための条件だからです。

企業にとっての利益は、人間にとっての水のようなものです。水を飲むために生きている人はいないでしょうが、水がなければ人間は生きていけません。企業の目的は決して利益をあげることではありませんが、利益がなければ企業は存続できないのです。

そして、ドラッカーは私たちに厳しい現実を突き付けます。利益は企業の目的ではなく条件だが、条件の方が目的よりきついとドラッカーは言います。私たちは目的を見失っても生きていけます。しかし、条件が整わなければ生きていけません。企業も同じです。

「社会貢献と利益とどちらが大事なんだ」といった、飲み屋で交わされるサラリーマンの議論にも、ドラッカーは納得のいく形で既に答えを出してくれているのです。

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