機能別組織と事業別組織
前回の続きです。今回は「組織」構成における代表的な2つのモデルを紹介しつつ、最近の新聞記事にみる組織変更の具体例をひきながら解説します。代表的な組織モデルは以下の2つです。1. 機能別組織
全体組織を個々の機能別にいくつかの下部組織に分割し、それをトップの下で並列管理するモデル。機能は、製造、開発、営業、人事、総務、経理などとなり、それそれが「部」あるいは「課」として管理されます。職能別組織とも言います。もっとも一般的な組織管理です。効率性を高めると言うメリットがあるという半面、顧客ニーズの把握と言うマーケティング面での弱さをデメリットとして内包しています。
2. 事業別組織
製品別・顧客別・地域別等の区分けによる事業ごとに、各事業部に製造・開発・営業などの管理におけるかなりの権限を持たせることで、利益を責任軸とした独 立採算を意識させたモデル。事業部制をさらにすすめたものに、各部門を子会社に見立てたカンパニー制があります。商品別のマーケティング面にメリットがある半面、部門のダブりなど効率性の面でのデメリットが指摘される組織です。
ちなみに、機能別組織と事業別組織を合体させた格子型管理組織としてマトリクス組織というものも存在します。ただし、これは命令系統が複数になる点で組織運営上支障が生じるデメリットが大きいので、恒常的な組織には使われにくくプロジェクトチームなどの組成時に限られるケースがほとんどです。
組織は戦略に従う
事業別組織の祖は松下幸之助
今年2月の新聞紙上で、パナソニックが4月から事業部制組織に管理体制を戻すという記事が報じられていました。パナソニックと言えばその前身の松下電器産業時代、創業者で“経営の神様”と謳われた松下幸之助氏が、欧米の企業に学んで日本でいち早く1933年に事業別組織を取り入れた企業でもあります。そもそも日本の家電業界は、その発展の歴史の中で、技術水準的に近しい大手数社が同じような製品を競争材料としてしのぎを削り共に発展をしてきたという流れがあります。すなわち、効率性を高めることで利益向上をはかる機能別組織よりも、製品分野ごとに消費者動向やニーズを細かく把握することで競争に打ち勝ち売上・利益の向上をはかろうという事業別組織の方が、その発展過程においては適した環境にあったのです。
日本の大手家電各社は、松下に習う形で次々と事業別組織の組織管理を導入しました。ソニーなどは、94年にこれを一歩進め本格的なカンパニー制をも導入しています(05年ホールディング・カンパニー設立で現在は廃止)。