条件のいい会社なのにグチが出てしまうのはなぜ?
会社に不満はないけど、満足はしていない。これってどういう気持ち?
すると、友人たちは「それだけ恵まれてるのに、まだ何か不足なの?」と一斉にブーイング。友人たちの剣幕に、Aさんはグチを引っ込めざるをえませんでした。「僕の言っていることはわがままなのかなぁ?」と反省するものの、「このままでいいのかな?」というモヤモヤ感が解決したわけではありません。
Aさんの心には、「会社に不満はない」、とはいえ「会社に満足しているわけでもない」、という2つの気持ちが内在しています。この微妙な気持ちを理解するヒントとして、アメリカの心理学者、ハーズバーグの説をご紹介しましょう。
不満じゃないけど、満足しているわけでもない
あなたの会社、衛生要因と動機要因が満たされていますか?
「衛生要因」(不満足要因)とは、報酬、休暇、会社の経営状態、働く場所などの労働条件や労働環境を意味します。
(例)
- 毎月決まった給料がきちんと振り込まれている
- 有給休暇を取得できている
- 経営がしっかりしている
- 職場環境は悪くない
一方の「動機要因」(満足要因)は、達成感や承認、ステップアップの機会など、働く意欲が高められるものを意味します。
(例)
- やりたい仕事をできる
- 努力したこと、達成したことが認められる
- 自分の裁量で仕事ができる
- スキルアップ、ステップアップの機会がある
ハーズバーグによると、条件や環境などの「衛生要因」が整っていないと、労働者は「不満足」に感じます。ところが、それが整っていたところで、「満足」をするわけでもないのです。仕事への満足感は、衛生要因ではなく、働く意欲につながる「動機要因」が満たされることが必要なのです。
「衛生要因」と「動機要因」の充実は両輪の輪
労働条件だけでもダメ、やりがいのある仕事だけでもダメ
つまりAさんにとって、労働条件や環境という衛生要因に問題はない。それでも、「この会社にいていいのかなぁ?」という気持ちが湧くのは、動機要因が満たされていないからなのでしょう。
たとえば、「仕事がマンネリでつまらない」「この会社では、スキルアップができない」。こんな気持ちがある場合、動機要因が満たされていないために、仕事への満足感が感じられないのだと思います。このように、動機要因が満たされない会社では、いくら経営者が衛生要因ばかりを充実させても、労働者は魅力を感じません。
かといって、動機要因だけが充実していればいいというわけでもありません。
ベンチャー企業の求人広告を見ると、「やりたいことを実現できる会社」などと、動機要因の充実ばかりを主張する会社が多いものですが、それで仕事内容への満足が得られたとしても、衛生要因をおざなりにしていたら、社員の不満が募り、離職率は高くなってしまいます。
つまり、会社は衛生要因、動機要因のどちらかを満たしておけばいい、というわけではないのです。2つの要因を両輪の輪として充実させることで、働きがいのある組織がつくられるのです。