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マイホームを賃貸した場合の確定申告(2ページ目)

住まなくなったマイホームを貸した場合や投資用の賃貸マンションを所有した場合など、賃貸収入があれば確定申告をしなければなりません。しかし、一般の人にとって減価償却費の計上など、なかなか分かりづらい面も多いでしょう。事業には至らない規模の賃貸収入があったときの確定申告について、主な注意点をまとめました。(2018年改訂版、初出:2012年12月)

執筆者:平野 雅之


不動産所得を計算する場合に、よく分からないのが減価償却費ではないでしょうか。これは「毎年、価値が減る」という考え方のもとに、現金などの支出を伴わなくても必要経費として認めるもので、建物だけが対象となります。土地については減価償却がありません。

減価償却を理解するためには、建物の取得価額、減価償却の基礎となる金額、定額法と定率法、耐用年数と償却率について知っておくことが必要です。


建物の取得価額を求める

建物の取得価額はそれを購入したときの金額、または注文住宅であれば建築価格です。不動産業者から購入した場合には、売買契約書の中に価格の内訳が記載されているはずですから、このうち建物本体価格と消費税額を合計したものが取得価額になります。

しかし、中古住宅などを個人から購入した場合には、売買契約書の中で建物価格と土地価格が区分されていないことが大半でしょう。

このようなときは建物の標準的な建築価額表によって求める方法、取得時における土地・家屋の固定資産税評価額の比率に基づいて価額を按分する方法などがあります。詳しくは ≪マイホームを売却したときの税金の基礎知識≫ をご参照ください。

賃貸にすることを目的として、ある程度まとまったリフォーム工事をした場合には、その金額を取得価額に加算します。

また、新たに投資用マンションなどを購入して借入金がある場合には、賃貸を開始するまでの期間に支払った利息について、その年の必要経費に含めるか、あるいは取得価額に加算するか、どちらでも認められます。購入時に不動産業者へ支払った媒介手数料などを取得価額に加えることも可能です。

なお、賃貸した物件が特例の適用を受けた買換え資産、あるいは相続遺贈贈与などで取得した資産の場合には、従前の取得価額を引き継ぐことになる場合があります。このようなケースに該当するときは、税務署または税理士などにご相談ください。


減価償却の基礎となる金額を求める

投資用マンションなどを新たに購入して賃貸した場合には、建物の取得価額がそのまま「減価償却の基礎となる金額」となります。

その一方で、これまで自ら使用していたマイホームを賃貸した場合には、購入時における建物の取得価額から、一定の減価償却をしなければなりません。取得価額から差し引く金額は、減価償却制度の改正により、取得した年に応じて次のようになります。

〔2007年3月31日以前に取得したマイホーム〕
当初の取得価額×0.9×旧定額法の償却率×経過年数

〔2007年4月1日以降に取得したマイホーム〕
当初の取得価額×定額法の償却率×経過年数

経過年数に端数があるときには、6か月以上であれば1年に切り上げ、6か月未満であれば切り捨てて計算をします。

なお、自らの居住用(マイホーム)で使用していた建物の場合における償却率は、法定耐用年数の1.5倍の年数に応じた数値を適用することになっています。

そのため、上の計算式に当てはめる償却率は(新旧とも)木造住宅の場合が0.031、鉄骨鉄筋コンクリート造および鉄筋コンクリート造住宅の場合が0.015となります。


定額法と定率法

建物の減価償却計算に使うのは、すべて定額法です。1998年3月31日までに取得した建物では、あらかじめ税務署長へ届出をすることにより定率法の適用も認められましたが、1998年4月1日以降は旧定額法のみ、そして2007年4月1日以降は定額法のみとなっています。

定額法とは、同じ資産に対して毎年一定額の償却をするものです。それに対して定率法とは、当初の償却額が大きくなる代わりに年々その額が減っていくものです。建物以外の設備については事前に届出をすることにより、現在も定率法を選択することができます。

ただし、通常のマイホーム賃貸や投資マンションなどで定率法を考える必要はないでしょう。


耐用年数と償却率

木造住宅の法定耐用年数は22年であり、マンションなど鉄骨鉄筋コンクリート造および鉄筋コンクリート造住宅の法定耐用年数は47年です。22年に対応する償却率は、旧定額法、定額法とも0.046、47年に対応する償却率は、旧定額法、定額法とも0.022となっています。

事務所、店舗、飲食店などに使用する建物であれば法定耐用年数が異なりますので、それに該当する場合は別途ご確認ください。

ただし、22年、47年というのは、あくまでも新築の場合の法定耐用年数です。中古マンションを取得した場合、あるいは今まで住んでいたマイホームを貸した場合などには、経過年数に応じて耐用年数を計算し直さなければなりません。

中古建物の耐用年数は次の計算式によって求めます。

中古建物の耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×0.2
(1年未満の端数は切り捨て)

たとえば築8年の木造住宅であれば、(22年-8年)+8年×0.2=15年 となり、15年に対応する償却率(旧定額法:0.066、定額法:0.067)を適用することになります。

同様に築10年のマンションであれば、(47年-10年)+10年×0.2=39年 が耐用年数(償却率は旧定額法、定額法とも0.026)です。

これは賃貸を開始した初年に求める耐用年数であり、2年目以降も同じ耐用年数、償却率を適用することになります。

そして、減価償却費の計算は次のようになります。

減価償却費=減価償却の基礎となる金額×耐用年数に応じた償却率

なお、賃貸初年において減価償却の対象となるのは実際に貸していた月数に対応する部分です。たとえば、9月に賃貸を開始して12月までの賃貸期間が4か月であれば、減価償却費は次のようになります。

減価償却費=減価償却の基礎となる金額×償却率×4か月(賃貸期間)÷12か月

それぞれの年数に応じた償却率は、インターネットで「償却率」などのキーワード検索をすればすぐに見つかるでしょう。


確定申告の手続き

不動産所得があった年の翌年2月16日から3月15日までの間に、確定申告書に収支内訳書(不動産所得用)を添えて、居住地を管轄する税務署へ提出します。

申告用紙や手引きなどは税務署へ行けばもらえるほか、国税庁サイト内の「所得税(確定申告書等作成コーナー)」からダウンロードすることもできます。

しかし、パソコンが使える環境であれば、画面上の指示に従って入力するだけで提出書類が作成できるシステムも用意されていますから、こちらを使うほうが便利かもしれません。

これまでに説明したことを踏まえれば、面倒な収支内訳書(不動産所得用)の作成も分かりやすいでしょうが、特殊な事情がある場合、あるいは分からないことについては、税務署または税理士にご相談ください。

また、賃料の未収金(貸し倒れ損失)があった場合の取り扱いについて、事業的規模であれば必要経費として認められることになっていますが、個人的レベルのものについては明確な規定がありません。このような場合にも、念のため最寄りの税務署でご相談ください。


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住宅を購入したときの確定申告 2018年申告版
住宅を売却したときの確定申告 2018年申告版
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