親が子どもにできることとは?
元綾川町立滝宮小学校校長
元高松市立国分寺中学校校長
「弁当の日」提唱者 竹下和男氏
(画像提供/大阪ガス株式会社)
「弁当の日」の提唱者、竹下和男氏の講演やセミナーから、「弁当」を作ることで育まれる子どもの能力、心、家族の絆についてご紹介します。
平成13年当時綾川町立滝宮小学校校長であった竹下和男氏は、「弁当の日」をスタートさせ、その後転任した高松市立国分寺中学校でも実施し、食育を実践されてきました。退職後は、講演や執筆活動を通じて「弁当の日」を提唱され、現在1,000校超の小中学校が取り組むほど広がりを見せています。
『世の中への扉 弁当づくりで身につく力』
竹下和男著
まず講演は、テレビ番組にも取りあげられた『はなちゃんのおみそ汁』という書籍に登場する女の子と、その家族の生活の様子を綴ったスライドからスタート。
余命の限られたお母さんが、自分の命がつきた後も娘がきちんと生きてゆけるように、3歳から洗濯や洗濯物のかたづけ、掃除等の家事のやり方を教えました。つい包丁や火を使う料理は後回しにしてしまったけれど、食は命の要なのだからと、5歳からはおみそ汁を作れるように教え、その5ヶ月後、お母さんは亡くなりました。
女の子は、お母さんとの約束を守り、毎朝鰹ぶしを削り、おみそ汁をつくります。毎朝お父さんに「おいしいよ、ありがとう」とほめてもらって保育園に出かけます。小学生になった女の子は、今では、お父さんのために晩ご飯も作っているそうです。
親は大切なことを伝えるのに、今は勉強が大切な時期だからと、
高校に受かったら・・・
大学に受かったら・・・
社会に出たら・・・
と、ついつい先延ばししてしまいがちです。
では、大切なこととは、何でしょう。
それは、スライドに登場した女の子のように、おみそ汁を作れば家族が喜んでくれることや、まるで大人のように料理を作ることができることで、成長過程の子どもにとっては大きな喜びにもなります。
しかし、大人は、「火や包丁は危ないから」、「自分がやった方が早いから」と、ついつい、子どもを育つ機会から遠ざけてしまうのです。