和菓子、バレンタイン商戦
バレンタインが近づくと、パリ発の世界最大級のチョコレートの祭典『サロン・デュ・ショコラ』をはじめ、東京はチョコレート一色に染まります。国内外の話題のチョコレートが味わえるまたとない機会、人に贈るだけでなく自分で味わうことを楽しみにしている方も多いのでは。一方でバレンタインは、和菓子好きにも見逃せないイベント。老舗和菓子店の遊び心ある生菓子に、百貨店だから実現できた日本と海外の老舗菓子店のコラボレーション菓子など、この時期を逃したらまず出会えないものがたくさん。異国の文化を吸収して発展し、季節感を表現してきた和菓子に、また新たな世界が広がりつつあります。
「いいだばし萬年堂」のバレンタイン上生菓子
飯田橋駅からすぐ、神楽坂の近くにある「いいだばし萬年堂」。江戸時代前期に京都で創業し、明治5年に東京へ移転した銀座の「萬年堂本店」11代目の息子さんが、平成5年に独立開業したお店です。同店を代表するお菓子といえば、お赤飯そっくりの蒸し菓子「御目出糖(おめでとう)」。漉し餡に餅粉などを混ぜたものをそぼろ状にし、蜜漬けの豆をのせて蒸したもので、お祝い事に最適です。また季節の上生菓子も秀逸で、伝統の意匠のほか遊び心あるものにも定評があり、楽しみにしているファンも多いよう。かくいう私もその一人です。
バレンタインには3種類の上生菓子が登場。「咲々(さきさき)」と「小春(こはる)」は、それぞれ小豆餡と白餡の「御目出糖」を、桜の花とハートをかたどった「こなし」で飾ったもの。小さなケーキにも見える愛らしさでバレンタインを盛り上げます。
主に関西を中心に使われる「こなし」は煉り切りに似たもので、白餡に餅粉などを混ぜて蒸し、揉みこなして作ります。御目出糖とこなしのもっちりとした食感が楽しく、甘さが前に出過ぎずあっさりとした印象。「小春」はベースの生地に柚子が練り込まれていて爽やかです。
基本的に動物性の素材を使わず油脂を含まないため、洋菓子に比べてヘルシーとされる和菓子。健康を気遣う方への贈り物にも喜ばれそうです。
「恋づつみ」はういろうの生地で白餡と苺を包んだもの。もちもちのういろうに甘酸っぱい苺、まろやかな白餡のバランスが絶妙です。
いわば苺大福の上生菓子仕立て。愛らしい見た目に贅沢な味わいは、女性にも子どもにも歓迎されそう。バレンタイン時期の手土産に覚えておきたい一品です。
上生菓子はお茶席のイメージが強く、菓銘(菓子の名)や意匠(デザイン)の意味が分かりづらいこともあり、少々敷居が高く感じられがち。ですが、バレンタインをモチーフにしたものは、分かりやすく親しみやすい点も魅力です。有名ショコラティエのチョコレート一粒と、さして価格の差はない上生菓子。価値ある日本の伝統美です。
<店舗情報>
◆「いいだばし萬年堂」
○所在地:東京都新宿区揚場町2-19 徳ビル1F
「JR飯田橋」駅東口より徒歩数分。
東京メトロ有楽町線・東西線・南北線・都営地下鉄大江戸線「飯田橋」駅C1出口より徒歩すぐ。※出来るだけ階段を避けたい方はB1出口の利用がおすすめ。
○Tel:03-3266-0544
○営業時間10:00~19:00(平日) ~17:00(土)
○定休日:日曜・祝日(不定休)※3月3日・5月5日・彼岸の中日、年末25日~31日は営業