ヒンドゥー教の世界観を表すロロ・ジョングラン

『ラーマーヤナ』のレリーフ

『ラーマーヤナ』のレリーフ。ラーマは紀元前5~紀元前6世紀に栄えたコーサラ国の王子で、神々を率いて悪を退治したといわれる伝説の君主。その物語を紀元前3世紀にまとめたのが『ラーマーヤナ』だ

ヴィシュヌ堂に収められたヴィシュヌ像

ヴィシュヌ堂に収められたヴィシュヌ像。足下にあるのは女性器を示すヨーニ

ロロ・ジョングランの8基のお堂のうち、3基は3大神を祀るブラフマー堂、シヴァ堂、ヴィシュヌ堂で、内部にはそれぞれの神像が置かれている。

もっとも大きいのがシヴァ堂で、高さ47mを誇り、23mの他の2基を圧倒している。南アジアでも東南アジアでもシヴァ神が中心に描かれる例は少なくない。

シヴァ堂をよく見てみよう。その基壇は34m四方の正方形で、人間や動植物の彫像やレリーフが刻まれている。その上の層はヴィシュヌの化身であるラーマがこの世に生を受けて神々と協力し合い、悪を滅ぼす様子を描いた『ラーマーヤナ』のレリーフが美しい。そしてピラミッドの最上段は、球形の鐘に円柱を通した独特の飾りに覆われている。

 

シヴァの乗り物である雄牛の神ナンディー

シヴァの乗り物である雄牛の神ナンディー。ナンディー堂にて

球形の鐘はボロブドゥールに飾られているストゥーパ(仏塔)にそっくり。実際その影響を受けているようだ。円柱はシヴァ・リンガで、リンガは男性器を示し、シヴァを象徴するものとして知られている。ヒンドゥー寺院にはどこにもたいていこのリンガが祀られている。

このようにシヴァ堂は基壇の人間界、最上段の天界、そして人間と天の中間にあたる神話層の三層から成っている。これはブラフマー堂、ヴィシュヌ堂も同様で、人間と神の関係を示している。

3基のお堂の正面に築かれた3基は3神の乗り物を祀るヴァーハナ堂で、フラフマーの乗り物である神馬ハンサ、シヴァの乗り物である雄牛の神ナンディー、ヴィシュヌの乗り物である怪鳥ガルーダの像が安置されている。

 

バンドゥンと美女ロロ・ジョングランの伝説

シヴァ堂の基壇を飾る装飾

シヴァ堂の基壇を飾る装飾。釣り鐘のような形をしているのが破壊神シヴァと男性器を示すリンガ。その下にはカーラと呼ばれる鬼がいて、さらに下には神々のレリーフが刻まれている

ロロ・ジョングランはもともと女性の名前。寺院に女性の名前がつけられているのはこんな伝説があるからだ。

ヴィシュヌ堂のエントランス

ヴィシュヌ堂のエントランス。鬼神カーラの顔が侵入者を威嚇する

昔々、プランバナン周辺にふたつの国があり、争い合っていた。一方の王には美しい娘がいて、ロロ・ジョングランと呼ばれていた。王の国は非常に強力だったが、敵王の将軍バンドゥン・バンダワサが使う魔術によって戦に敗れると、王は殺害されて滅ぼされてしまう。

プランバナンの地を平定したバンダワサは王女を娶ろうとするが、ロロ・ジョングランは敵将の妻になることを拒否。しつこく迫るバンダワサを避けるために、「一夜で千の寺院が造れたら結婚します」と条件をつける。これを聞いたバンダワサは再び魔術を使って精霊を呼び出すと、さっそく寺院の建設を開始する。

次々と完成する寺院を見て不安を感じたロロ・ジョングランは村人に命じて東の大地に火を起こす。すると精霊たちは日の出と勘違いして急いで闇に逃げ去ってしまう。このとき寺院はすでに999まで完成していた。

 

バンダワサはロロ・ジョングランの企みを知ると怒り狂い、彼女を呪って石像に変え、1,000基目の寺院に閉じ込めてしまう。これが現在に伝わるシヴァ堂で、北の部屋に収められたドゥルガー像が石になったロロ・ジョングランだと伝えられている。