マヤ文明を代表する世界遺産「古代都市ウシュマル」

曲線が美しい魔法使いのピラミッド

曲線が美しい魔法使いのピラミッド。下段のタルー部(スカートのような部分)の高さだけで20mもあり、傾斜角は60度にもなる ©牧哲雄

尼僧院、総督の館、グラン・ピラミッド、大球戯場……モザイク装飾が美しいプウク式遺跡の保存状態はきわめて良好で、マヤ特有の世界観を強烈に物語る。特に魔法使いのピラミッドは楕円形をした珍しいピラミッドで、チチェン・イッツァのエル・カスティーヨと並んでマヤでもっとも有名なピラミッドのひとつでもある。

今回はマヤ文明の全盛期をリードしたメキシコの世界遺産「古代都市ウシュマル」を紹介する。

メソ・アメリカとタルー・タブレロ式ピラミッド

グラン・ピラミッドから眺めたウシュマルの建造物群

グラン・ピラミッドから眺めたウシュマルの建造物群。右が魔法使いのピラミッド、その下が亀の館、左が尼僧院 ©牧哲雄

雨の神チャックの像

雨の神チャックの像。突き出ているのが鼻 ©牧哲雄

中国や日本の古墳、仏教やヒンドゥー教の仏塔や寺院、西アジアのジッグラト、エジプトやスーダンのピラミッド、南米のワカ、ミクロネシアのマラエ……世界には土や岩や煉瓦を積み上げたピラミッド状の古代遺跡は少なくない。

特にピラミッドが集中しているのがメキシコからコスタリカにかけてのメソ・アメリカと呼ばれる地域で、ここには千を超えるピラミッドがあるといわれている。

メソ・アメリカのピラミッドの特徴はタルー(傾斜壁)とタブレロ(垂直壁の基壇)を交互に積み重ねた階段状のピラミッドであるところ。四角錐で階段が尖っているためゴツゴツした外観を持つ。

ところがウシュマルの魔法使いのピラミッドはまったく違う。タルー・タブレロ式ではあるが底面は中米でも滅多に見られない楕円形で、タルー部の曲線が柔らかでエレガントな印象を生み出している。

 

チチェン・イッツァのエル・カスティーヨ

チチェン・イッツァのエル・カスティーヨ ©牧哲雄

チチェン・イッツァのエル・カスティーヨがマヤでももっとも雄々しいピラミッドであるならば、魔法使いのピラミッドはマヤでもっとも優雅なピラミッド。チチェン・イッツァとウシュマルは直線距離で120kmほどしか離れていないので、ぜひ見比べてみてほしい。

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魔法使いのピラミッドとその伝説

背後から眺めた魔法使いのピラミッド

背後から眺めた魔法使いのピラミッド。最上段と中央の二個所に神殿がある ©牧哲雄

正面から見た魔法使いのピラミッド

中米のピラミッドは古いピラミッドを覆うように新しいピラミッドを増築し、徐々に大きく造り替えていった。魔法使いのピラミッドも同様で、5回増築されている ©牧哲雄

「魔法使いのピラミッド」の呼び名はこの地域に伝わる魔女伝説に由来する。

昔々この辺りに魔法を使うおばあさんが住んでいた。おばあさんに子供がいないことを聞いた小人たちは彼女を不憫に思って卵を贈る。おばあさんがそれを大切に温めていると、ある日卵が割れてひとりの子供が誕生する。

その子の成長はすぐに止まり、小人ほどにしか育たなかったが、産まれながら言葉が話せるほど聡明で、しばしばおばあさんを驚かせていた。

一方ウシュマルでは、予言によって新しい王の誕生が噂されていた。おばあさんの子供はその不思議な力によって候補者となり、王が与える数々の試練をくぐり抜け、ついに王の後継者となる。

 

新王は「ウシュマルには都にふさわしい神殿が必要だ」というと、一夜のうちにピラミッドを造り上げてしまう。これが魔法使いのピラミッドだ。

ジャングルの中にそびえ立つピラミッドを見た人々は彼の力を讃え、新しい王として迎え入れたという。