小さな個性が結合しひとつに生まれ変わった、みちのく六歌仙

エントランス

広い敷地内にある株式会社六歌仙。隣り合って六歌仙酒造協業組合がある

山形は名酒の多い県として知られる。北の米どころ庄内地方に18場、最上川水源の最上地方に2場、名蔵の多い村山地方に14場、内陸盆地の置賜地方に18場と、県内52場がしのぎを削り、切磋琢磨している清酒県である。





 

倶楽部

こちらは販売所の「六歌仙倶楽部」。試飲と販売ができる

今回お邪魔したのは、極上のさくらんぼで知られる東根市にある株式会社六歌仙。広々とした5000坪の敷地を要する蔵で、生産量は2000石。もともと小さな蔵が多かったこの地方だが、この六歌仙は、この土地の地酒蔵数社が手を組みひとつの会社となり再スタートを始めたという歴史がある。創立は昭和47年。山形銘醸(株)として「みちのく六歌仙」が誕生した。昭和60年には醸造部門を集約し協業組合を設立。日本酒の長い歴史の中から見ればまったく新しい組織の銘柄「六歌仙」はこの地域の6社が合併するというところから名づけられたのだ。

六歌仙

倶楽部の中には六歌仙の絵が。歌人らとともに乾杯するのも粋なものだ

もともと六歌仙とは、「古今和歌集」の序文において紀貫之が「近き世にその名きこえたる人」として挙げた6人の優れた歌人たちのこと。歌人それぞれに個性があるように、地酒蔵のコラボレーションも、それぞれの個性を生かしつつもそのパワーを集約した酒造りを目指し、今も見事にそれを達成し続けている。「六歌仙の歌は、小野小町などに代表されるように優しい歌が有名なんです。ならば酒もやさしくという意味もこめています」と語るのは、この日お話をうかがった若き経営者、代表取締役の松岡茂和氏。

実際には、「松美登利」(松岡酒造)、「志ら多可」(高宮酒造)、「東養老」(横尾新酒造店)、「翁養老」(庄司酒造店)、「羽陽菊川」(丸屋酒造場)の5社が合弁となったが、「当初の費用7億円はすでに完済しています」と優しいながらも力強い笑顔を浮かべる。代表取締役は5社が順番に就任してきたようにもともと5社は仲がよく、企業理念もぶれることなく、まっすぐに進むことができたようだ。

さらには、「新技術を積極的に取り入れ、技術革新していく」ことが創立時からの思いであり、自然で純粋な酒造り(発酵)を主軸に、普通酒から最上級の純米大吟醸クラスの酒質まで、手を抜くことなく上質の品質を生み出し、お客様にお届けすることをモットーとしてきた。実際に蔵の中を拝見すれば、若いスタッフが、新しい技術とセンスを駆使しながらも、伝統の手法と地域性を重要視し、酒造りに携わっていることがはっきりと感じられた。

山形日本酒学校

前日行われた山形日本酒学校の基調講演

実は、この見学の前日、山形市内にて「山形日本酒学校」が開催され、ワタクシ友田が基調講演をやらせていただいた。その際、華やかなタイプ、軽快なタイプ、コクのあるタイプ、熟成タイプ、にごり酒、原酒、発泡清酒などさまざまなタイプ別の日本酒の飲み比べを行ったのだが、すべてのタイプを揃えることができたのは、この六歌仙だったのだ。松岡氏いわく「うちは、技のデパートですから」と。なるほど、これだけタイプの違う銘柄を取り揃えているのは、5社の力が重なったことと、若いエネルギーがかもし出すパワーがあってこそだと感じられた。