賃貸マンションだと行き当たりばったりに!?
賃貸マンションで遮音性能を事前に知ることは難しい
賃貸なので新築分譲マンションのように「床板の厚さ○○センチ」「戸境壁の厚さ○○センチ」「使用しているフローリングの遮音性能はL-○○等級」「サッシの遮音等級はT-○○」などといった、遮音性能を示す情報は一切得ることができなかった。
現在家を賃貸する場合は遮音性に関する説明義務などなく、知らないまま入居せざるを得ないのが現状だ。「住んでみて初めてわかる」、そのような状況だから、騒音で悩む人は後を絶たないのだと思う。
賃貸vs分譲 遮音性はどう違う?
賃貸マンションと分譲マンションで遮音性に違いはあるだろうか。マンションの設計にかかわった経験からいうと、まず全体的に分譲マンションと賃貸マンションでは、つくられ方や内装材などに差があることは否めない。一般的に分譲マンションとして造られたマンションのほうが高品質・高級仕様となっている。それは遮音性にも関係してくる。具体的には、子どもの足音や飛び跳ねる音などは、床板(コンクリート躯体)の厚さが厚ければ厚いほど伝わりにくくなる。新築分譲マンションなら、遮音性に気を使って必要以上に床を厚くすることもあるが、賃貸マンションではそこまで気を遣う物件は少ないのが現状だ。使用するフローリング、サッシの遮音性能も、分譲マンションの方が性能が上のものを使う傾向があると言ってよいだろう。
もし賃貸に住むなら
賃貸マンションを選ぶ時、どうしても遮音性にこだわりたい場合、自衛策としては、鉄骨や木造よりも、鉄筋コンクリート造のマンションを選びたい。実際には壁や床、窓の構造によって違ってくるけれど、一般的に鉄筋コンクリート造のほうがしっかりした造りになっていて、上下左右の住戸からの音は伝わりにくい。しかし、最近では遮音性を気にする人が増えたため、床の振動を抑えたり、隙間を埋めるなど新しい技術を使って遮音対策をしている鉄骨造の賃貸住宅も出てきている。そのような物件であればより安心だが、数はまだ多くはないだろう。
1階は気がラク
賃貸マンションに入居したとき、子どもたちは中学3年生と小学5年生になっていて、もうイスから飛び降りたり、室内を走り回ることもなかった。だけどイスを強く引いたりドンドンと足音を響かせて歩くことがある。幸いなことに1階の角部屋に入居できたので、下階への音の心配はなくて済んだ。1階なので窓からの景観は期待できないけれど、子どもがいる生活で「他人に迷惑を掛けるかもしれない」という心配がなくなったことは大きい。上からの音が気になることもあるけれど、気のラク加減でいえば、大満足だ。私は小さな子どもがいて音が気になるご家庭では、1階に住むことをおススメしたい。
上からの気になる音
引き戸を引く音は上下に響きやすい
気が付いていない人もいるかもしれないけれど、マンションでは夜中の引き戸の開け閉めは、なるべくしないほうがいいかもしれない。
外から飛び込んでくる音
引っ越してみてフタをあけたら上左右の住人は「みな大人」という構成で、夜中の引き戸の音さえ除けばまずまず静かな環境で、幸いなことに「住戸間の音」に関しては気兼ねなく暮らすことができた。しかし1階ゆえに外廊下側に面した駐車場の話し声などは丸聞こえだ。お母さん同士の話し声、子どもをしかりつける声、子どもの笑い声、それなりに大きな音が飛び込んでくるが、気にならない。それはたぶん、その親子のことをよく知っていたからだと思う。
騒音問題の解決は「知った仲」
引っ越しをしたら家族全員で挨拶しよう
先ほども触れたように、入居したのは全部で15戸の小規模なマンションで、子どものいる世帯ならほぼ顔見知りという環境だった。
「ああ、また○○ちゃんがしかられているのね」と声でわかるので、腹はたたない。その音を「騒音」と感じるか「許容範囲だ」と思えるかは、受け手側の状況によって変わってくる。知っている人の出す音であれば許容範囲は広がると思う。
だから、もし「自分たちの出す音がうるさいかも」と思ったら、積極的に挨拶を交わし「知った仲」になっておくといいと思う。もちろん日々なるべく迷惑をかけないように気をつけて生活することは必要だ。でも、相手が受ける印象が異なってくることは、間違いない。
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