大人にもあるたくさんの「いじめ」
最近、中学生のいじめによる自殺の問題が話題となり、「いじめ=中学生の問題」という印象が強くなっていると思います。しかし、実際にはいじめはどの年齢でも起こっています。子どもたちを育てる立場である大人の世界にも、さまざまないじめがあり、死にたい気持ちになるほど追い込まれる人も後を絶たないのです。大人のいじめは、一般的にハラスメント(いやがらせ)と呼ばれるもののなかによく見られます。ハラスメントについては、このサイトでも度々紹介してきましたが、今また改めて、「いじめ」という観点から3つのハラスメントを紹介したいと思います。
その1. モラル・ハラスメント
一見いじめとは分からないような巧妙な嫌がらせ「モラハラ」
誰かに目立ったことをやらせて、失敗すると嘲笑したり、発言のたびに揚げ足を取ったり、欠点を人前であげつらって、恥をかかさせたり。ある人だけ誘わなかったり、話しかけても聞こえないふりをして無視したり・・・・・・。
このように、一見すると加害者が特定できない手法で人を傷つける、加害者側が迷惑を被っていると思わせるようないじめ方をする、これがよく知られるモラハラの手口です。『忠臣蔵』の浅野内匠頭をいじめた吉良上野介の手法、と言えばピンとくる方も多いでしょう。
モラハラの目的は、被害者の自尊心をくじくことです。たとえるなら、「ジャイアン」のように分かりやすく相手を威圧するのではなく、「スネ夫」のようにずるく巧妙に相手を貶めるやり方です。こういういじめ方をされると、被害者は「私には能力がないんだ」「私がいるから周りに迷惑をかける」というように、自分に非があると思いこんでしまいます。
その2. パワー・ハラスメント
パワハラ的いじめは職場だけでなく、あらゆる場所で起こる
部下に人格を否定するような言葉を浴びせ続けたり、正当な理由もないのに一人だけ仲間外れにしたり、仕事を与えない、達成できないノルマを課す、というようなやり方が一般的です。または、部下が新任の上司の揚げ足を取って、無能さを印象づける、ベテラン社員が新入社員に情報を与えず、わざと失敗させる、このように、力を持っている部下から上司、同僚によるいじめも含まれます。
こうしたパワハラ的ないじめは、職場以外の場でもよく見られます。たとえば、夫婦間の暴力であるDVや、大人から子どもに対しての児童虐待、養護者や介護スタッフによる高齢者虐待も、優位性を利用したパワハラ的ないじめの一つでしょう。
その他にも、大学の研究室などの教員が学生や研究員に対して行う「アカデミック・ハラスメント」や、医師が患者に対して行う「ドクター・ハラスメント」のように、圧倒的なヒエラルキーや上下関係が生まれじやすい場所でも、パワハラ的ないじめは発生しやすくなります。