不動産価格が右肩上がりで上昇し続けた時代には、家の買換えによってどんどんステップアップすることが可能でした。
しかし、現在は購入したときから価格相場が下がり、買換えが困難になるケースも少なくありません。必要に迫られて買換えをするときでも、目的をしっかり定めて十分な段取りをすることが大切です。
買換え物件が新築工事を伴うなら、より一層慎重な資金計画が大切
今回はマイホームを買換えるとき、事前にしっかりと考えておきたい資金計画のポイントについて確認しておくことにしましょう。
いくらで売れるのか
買換えにあたっては、まず「今のマイホームがいくらで売れるのか」が重要です。マンションの場合など、インターネットの簡易査定で一瞬にして価格がはじき出されることもありますが、これを鵜呑みにせず、不動産業者によく調べてもらったうえで売却価格を知ることが大切です。土地や一戸建て住宅の場合であればなおさら、しっかりとした価格査定が欠かせません。「近所のあの家が○○万円で売れたから、ウチも同じくらいで売れるだろう」という思い込み価格だけを頼りに楽観的な資金計画を立てることは禁物です。
しかし、不動産業者にきちんと査定してもらった価格でも、そのままでスムーズに売れるとはかぎりません。
極度に悲観的な考えを持つ必要はないでしょうが、あまり高望みはせず「最低でもこの価格なら売れる」というラインを把握するようにします。売却にあたって不動産業者による下取り保証、買い取り保証などがあれば、その価格を基準にして資金計画を考えればよいでしょう。
参照 ≪家の売却~価格査定を受けるときのポイント≫
今の住宅ローンを返せるのか
これから売ろうとするマイホームの住宅ローンが残っている場合には、売却に合わせてその全額を返済し、抵当権を抹消しなければなりません。住宅ローンの残高(残債)よりも高く売れればよいのですが、残高を下回る価格でしか売れなければ、預貯金など手持ちの資金からその穴埋めをすることになります。
差額を埋める手持ち資金がないときは、買換え物件の購入資金と合わせて「買換えローン」(住み替えローン)を利用できる場合もありますが、そのぶん借入れ額が膨らみ、毎月の返済額も多くなってしまいます。
それを避けるためには、購入物件の価格帯を下げることなども考えなければならず、「本当に買換えが必要か」という根本に立ち返って再検討してみることも大切です。
売却諸費用、購入諸費用をしっかりと把握する
売却物件の住宅ローンが残っていない場合、あるいは住宅ローンの残高を上回る価格でマイホームが売れた場合でも、手元に残ったお金をすべて購入物件の代金に充てることはできません。売却にあたっても、さらに買換え物件の購入にあたってもさまざまな費用が必要ですから、事前にしっかりと把握しておくことが重要です。
売却物件では、購入希望者から指し値(契約価格の値下げ交渉)を受けるケースばかりでなく、とくに土地や一戸建て住宅を売却するときは相手からさまざまな条件が提示され、場合によっては数十万円から百万円を超えるような費用負担が発生することもあります。
これらはすべて契約交渉次第の面があるとはいえ、購入希望者が提示する条件のすべてを拒否していたのでは売却できないこともあるため、最低売却価格の把握と併せてよく考えておかなければなりません。
なお、手数料不要の新築マンションなどを購入する場合を除き、原則として売却と購入の両方の契約に際してそれぞれ媒介業者への媒介手数料が必要です。
そのため、この両方を同じ業者に任せ、「一方の手数料をタダにしてくれ」あるいは「手数料を値引きしてくれ」という条件を事前に提示する人もときどきいるようです。
しかし、契約が決まる前にそのような要求をすれば、媒介業者は他から手数料を稼げる物件や契約相手に限定して営業をすることにもなりかねません。それが原因と考えられる失敗事例もあるため、十分な注意が必要です。
参照 ≪家の売却~家を売るときに必要な費用と税金≫
参照 ≪住宅購入・取得時の諸費用に関する基礎知識≫
これから売る家に問題点はないか
売却するのが一戸建て住宅や土地の場合には、その物件自体に何らかの問題がないのかという点についても十分に注意しなければなりません。たとえば耐震性能が不足する家であれば、耐震補強工事をしてからでなければ売れない場合もあります。敷地の境界問題や構造物の越境問題などをめぐって隣地とトラブルがあれば、売却をする前にそれを金銭で解決しなければならないケースもあるでしょう。このとき、問題がきちんと決着するまでは、買換えに充てることのできる金額がはっきりしないことになります。
想定外の出費で資金計画が狂うことのないように、不安定な要因は事前にできるかぎり取り除いておかなければなりません。
売り先行か、買い先行か
家の買換えをするときに考えなければならない大きな要素の一つが、売り先行か、あるいは買い先行か、という問題です。これまで住んでいた家の売却と新しい家の購入を並行して進め、売った家の明け渡しと同時に新しく買った家に入居できればベストですが、現実にはなかなかうまくいきません。
無理をして「同時にできること」を優先させれば、どこかで妥協をしたり、不満の残る新居を選ばざるを得なくなったりすることもあるでしょう。
売りを先行させれば、一時的な仮住まいを用意する必要があります。逆に買いを先行させれば、前の家と新しい家で一時的に二重ローンとなることもあります。ある程度の余裕をもってそれぞれの期間を推定し、その間の負担分を買換えの資金計画に盛り込むことも欠かせません。
また、一時的にせよ二重ローンになる可能性が高いときには、金融機関が新しい住宅ローンの審査にあたって厳しく判断し、希望する金額が借りられないケースもあります。
一方、売りを先行させたときには買換えに充てることのできる資金を、早めに確定させることができます。
それに対して、買いを先行させたときには「いまの家がいくらで売れるか分からない」という不安と同時に、買換えに充てる資金の変動要因も残ったままですから、購入する物件の価格帯を下げるなど、リスクを少なくすることも検討が必要です。
参照 ≪家の買換え~売るのが先か、買うのが先か≫
住宅ローン完済時の年齢も考える
初めて家を買う層に比べ、買換えの年齢層が高くなることも多いでしょう。そのため、初めて家を買うのと同じような条件で住宅ローンを借りれば、完済時の年齢も高くなってしまいます。自分がいつまで住宅ローンの返済をすることができるのか、定年などで年収が下がったときの生活は大丈夫かなど、老後のことをしっかりと考えた資金計画も大切です。
完済時の年齢を80歳くらいにして組むことのできる住宅ローンもありますが、金融機関が貸してくれる条件と、自分が無理なく返済できる条件は、話がまったく別であることもよく考えなければなりません。
借入れ期間を短くすることで毎月の返済額が増える、あるいは借入れ金額を抑えなければならない、といった状況になることもあるでしょうが、ここで無理をして先々の生活が苦しくなることは避けたいものです。
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