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敷地延長、路地状敷地、旗ざお状敷地のメリット

一般的には敬遠されることも多い「敷地延長」の物件ですが、価格が安いこと以外にもいくつかのメリットがあります。図面だけではなかなか分からないことが多いため、実際に現地を見て使い勝手などを判断することも必要です。(2018年改訂版、初出:2012年7月)

執筆者:平野 雅之


道路からみて少し奥まったところに建物の敷地があり、その間に2mから3m程度の幅の通路が設けられている土地をよく見かけます。

階段状の敷地延長部分

奥の敷地との間が階段状になっている場合もある


このような敷地形状について正式な名称はありませんが、一般的に「敷地延長」(敷延=しきえん)、「路地状敷地」、「専用通路」(専通=せんつう)、あるいはその形状から「旗ざお状敷地」などと呼ばれます。

この場合、敷地延長部分は少なくとも2mの幅が必要とされ、都市計画区域内でこれを下回るときには原則として建築確認を受けることができません。また、敷地延長部分の面積は、建ぺい率や容積率を計算する際の敷地面積に含まれます。

敷地延長の典型的な例

敷地延長の典型的な形状の例


通常の整形地に比べると敬遠されがちで、価格(単価)もそれなりに安くなることが多い敷地延長の物件ですが、その条件はさまざまで、逆にメリットとして考えられる側面もあるでしょう。

敷地が奥まっていることで、前面道路の喧騒が緩和される場合もあります。また、前面道路の交通量が多くても、子どもが玄関を出てすぐに道路へ飛び出すような危険性がありません。

その反面で、不審者が敷地へ侵入したときに外部から見えづらいというデメリットもあるため、敷地延長物件の場合には隣地からの見通しを良くしたり、防犯対策を慎重にしたりといったことも求められます。

タイル敷きの敷地延長部分

敷地延長部分の幅が十分に広いと落ち着いた重厚な雰囲気になることも


敷地延長部分を単純に通路の目的だけとして捉えるとやや寂しい感じになりますが、少し工夫をすることで風情のある玄関回りを造ることもできます。

砂利のままの単調な敷地延長

単純に通路として割り切ってしまうと少し寂しいが……

趣のある敷地延長部分の演出

敷地延長部分を使って趣のある外観を演出することもできる


敷地延長部分の利用方法で最も多いのは、カースペースとして使うケースです。しかし、その幅が最低限の2mちょうどでは、停められる車種が限られる場合もあるほか、敷地延長部分の形状がストレートなままだと車の出し入れが難しいこともあるでしょう。

前面道路の幅によっても使い勝手は左右されますが……。

敷地延長が狭い例

一般的な敷地延長物件では、車を停めるとギリギリで余裕がないことも


このようなとき、下図のように敷地延長部分に「すみ切り」が設けられていたり、隣地の敷地部分と一体で整備されていたりすれば、車の出し入れが楽になるでしょう。ただし、駐車のたびに隣地の一部を通るときには、隣地の居住者と良好な関係を維持していくことも欠かせません。

すみ切りの概略図

敷地延長部分にすみ切りを設ける場合の例

すみ切りを設けた敷地延長部分

敷地延長部分にすみ切りがあると車の出し入れは楽になる


また、建売分譲物件などの場合には、敷地延長部分のうち道路側の一定の部分の幅を広くして、カースペースとしての使い勝手を高めているケースもあります。

カースペースを設ける場合の概略図

敷地延長部分の一部の幅を広げる場合の例

カースペースを設けた敷地延長部分

カースペースとして使うことを前提に区画割りがされていることもある


さらに、2軒の敷地延長部分とその両隣の敷地を合わせ、一体でカースペースが整備されている例もあります。このようなときは、お互いに車を停める位置を工夫することで、だいぶゆったりとした感じになります。もちろん、この場合も良好な隣人関係が欠かせません。

隣地と一体で整備した敷地延長部分

隣地と一体のカースペースで空間にゆとりが生まれる


ちょっと変わったものでは、3軒分の敷地延長部分を束ねて見た目はまるで6m幅の道路のような場合もあります。かなりレアケースでしょうが、これも道路ではなく敷地の一部です。

敷地延長部分の特殊な事例

3軒分の敷地延長部分を束ねている例


土地や一戸建て物件を探すとき、敷地延長という理由だけで敬遠する人も少なくありませんが、図面を見るだけではなかなか分からないことが多いでしょう。自分の思い込みだけで候補から外すのではなく、現地を見て実際の使い勝手なども確かめたうえで判断したいものです。


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