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2012年新登録の世界遺産(4ページ目)

2012年7月、新しい世界遺産26件が誕生し、世界遺産総数は962件となった。事前に不登録が勧告されていたパレスチナの聖誕教会は、アメリカ・イスラエルの反対を押し切って逆転登録。今回はロシアのサンクトペテルブルクで開催された第36回世界遺産委員会の内容をお伝えする。新登録の世界遺産全リスト付き!

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

2012年新登録の世界遺産全リスト 後編

カナダの世界遺産「グラン・プレの景観」

カナダの世界遺産「グラン・プレの景観」に登録された美しい牧草風景。18世紀、イギリスの圧力により、フランス系入植者アカディアンたちはこのアカディアン教会でグラン・プレからの追放をいい渡された

<文化遺産>

■グラン・プレの景観
Landscape of Grand Pre
カナダ、文化遺産(v)(vi)
17世紀、フランス人入植者たちは太平洋岸の広大な草原=グラン・プレを切り拓き、入植を開始した。彼らアカディアンは木で水路や水門・堤防を建設して水を引き、小麦などの穀物を栽培し、牛を飼って定住生活を行った。18世紀にはイギリスとフランスの戦争に巻き込まれ、イギリスによる侵略・弾圧・追放をたびたび受けたが、グラン・プレには数々の遺構が残されており、初期入植者たちの生活の様子をいまに伝えている。

■リオ・デ・ジャネイロ:山と海に挟まれたカリオカの景観
コルコバードのキリスト像

コルコバードのキリスト像。手の幅は30m、重さは基壇を含めて1,000t以上もある

Rio de Janeiro: Carioca Landscapes between the Mountain and the Sea
ブラジル、文化遺産(vi)
カリオカとは先住民族トゥピの言葉で「白い家」。リオ・デ・ジャネイロに入植してきたポルトガル人を見てトゥピ族がこう呼んだことにはじまり、街や住民を示す言葉となった。そのカリオカの象徴が、標高710mのコルコバードの丘に立つ、高さ約40mの巨大なキリスト像だ。丘の麓にはチジュカ国立公園が広がっており、熱帯雨林が保存されているだけでなく、1808年に建設された植物園が設置されている。

 

■グラン・バッサム歴史都市
Historic town of Grand-Bassam
コートジボワール、文化遺産(iii)(iv)
グラン・バッサムはギニア湾岸の都市。フランス領コートジボワールの政治・経済を担う都市として建築された。フランス人が暮らす植民地様式の街並み以外にも、アフリカ人のための住居や漁村も点在し、ヨーロッパとアフリカの複雑な関係を示す物件としてその価値が認められた。市内はアンシャン・バッサム(旧市街)とヌーヴォ・バッサム(新市街)に分かれているが、旧市街の歴史地区が世界遺産に登録された。

■バサリ地方:バサリ、フラ、ベディクの文化的景観
Bassari Country: Bassari, Fula and Bedik Cultural Landscapes
セネガル、文化遺産(iii)(v)(vi)
セネガル南東部の山間部に広がるバサリ地方には、11~19世紀にかけて、バサリ族・フラ族・ベディク族といった人々が暮らしていた。草葺きの家並みが連なる村々や棚田を中心とする景観は、自然と共に生きる人々の思想をよく表現しており、特徴的な宗教儀礼や習慣・伝承とあわせて高く評価された。世界遺産にはバサリ族のサレマタ地域、フラ族のディンデフェロ地域、ベディク族のバンダファッシ地域が登録された。

■近代首都・歴史都市、ふたつの相貌を持つラバト
ラバトの城砦、ウダイヤのカスバ

ラバトの城砦、ウダイヤのカスバ。18世紀にウダイヤ・アフブ族を駐屯させたことからこの名がついたが、城砦は12世紀から増改築が繰り返されてきた

Rabat, modern capital and historic city: a shared heritage
モロッコ、文化遺産(ii)(iv)
ラバトはフランス人建築家アンリ・プロストが1912~1930年の間に造りあげた計画都市だ。王宮や議会・商業施設が整然と整備されており、20世紀のアフリカを代表する都市景観で知られている。また、ラバトは古代より続く歴史都市でもあり、12世紀のムワッヒド朝時代に建てられたハッサン・モスクや城壁もよく残されている。ムーア人の文化や17世紀アラウィー朝の影響も受けており、独特の文化が認められた。

<自然遺産>

 

■澄江化石地域
Chengjiang Fossil Site
中国、自然遺産(viii)
海の中に大型生物が現れ、現在の主要な動物門のほとんどが出そろい、一気に地球全体に広がっていったと考えられている原生代エディアカラ紀から古生代カンブリア紀にかけての時代。澄江では古いもので5億3千万年前まで遡る無脊椎動物や原始的な脊椎動物の化石が多数発掘されており、少なくとも16門196種に及ぶ動物が確認されている。そのあまりの種類の多さから、この地で発見された動物は「澄江動物群」と呼ばれている。

■西ガーツ山脈
Western Ghats
インド、自然遺産(ix)(x)
デカン半島の西側に壁となってそびえているのが西ガーツ山脈だ。アラビア海からの風を受けて大量の雨を降らせる一方で、デカン高原側に乾燥した風を吹き下ろしている。多くの大河の大水源であり、インド全域の気候に大きな影響を与えている。生物種が多いことで知られており、世界でもっとも生物多様性を保持する8つのホットスポットのひとつに数えられている。

■レナ石柱自然公園
Lena Pillars Nature Park
ロシア、自然遺産(viii)
レナ石柱自然公園はその名の通り石柱群で知られ、高いもので100mに達する石柱がレナ川沿いに森のように連なる驚異的な景観を見せている。これは岩の亀裂に水が入り、凍結・融解を繰り返すことで仕上がる自然の彫刻だが、-60~+40度という強烈な寒暖差を生み出すこの地の気候が大きく関係している。また、この自然公園からはカンブリア紀の化石が多数発掘されている。

■3か国にまたがるサンガ
Sangha Trinational
カメルーン/コンゴ共和国/中央アフリカ、自然遺産(ix)(x)
手つかずの熱帯雨林が広がるサンガ川流域には3か国の国境が集まっており、それぞれカメルーンのロベケ国立公園、コンゴ共和国のヌアバレ・ンドキ国立公園、中央アフリカのザンガ・ンドキ国立公園として保護されている。ゾウやゴリラ、チンパンジーなど大型ほ乳類も数多く生息しているが、その多くが絶滅危惧種となっている。コンゴ共和国にとって初の世界遺産となった。

■オウニアンガ湖群
Lakes of Ounianga
チャド、自然遺産(vii)
サハラ砂漠に広がる18の湖を登録したもので、チャドにとってはじめての世界遺産登録となった。ほとんど砂漠という超乾燥地帯にあり、水が地下水によって供給されるため、ミネラル分を豊富に含んでいる。水深は浅く、数メートルから30m弱にすぎない。濃い塩水湖には藻やバクテリア等しか棲めないが、真水に近い湖では草木や魚も見られ、オアシスのような豊かな生態系を見ることができる。

<複合遺産>

■ロックアイランドの南部ラグーン
ロックアイランドの小島

ロックアイランドの小島。島は石灰岩でできているため、風雨に浸食されてユニークな形をしているものが多い

Rock Islands Southern Lagoon
パラオ、複合遺産(iii)(v)(vii)(ix)(x)
パラオ初の世界遺産で、世界で29件目の複合遺産。古いサンゴ礁が隆起した無数の石灰岩からなる島々で、世界遺産登録の地域には445もの島が存在し、その周囲は美しいサンゴで覆われている。島々には多数の塩湖が存在し、隔絶された環境の中でそれぞれ特異な生態系を築いている。また、古代から人間が暮らしていた跡が残っており、洞窟壁画や墳墓といった遺跡の考古学的価値が認められて複合遺産としての登録となった。

以上です。来年は「富士山」と「古都鎌倉の寺院・神社」の世界遺産登録の可否が決定します。楽しみですね!

 

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