不適合接道の土地が事態を複雑に
老朽化した空き家の問題は、相続や所有する個人の事情による面も強いのですが、一つの大きな要因として挙げられるのは「不適合接道」です。不適合接道の土地とは、都市計画区域内において建築基準法で定められた道路へ適切に接していないことにより、建築確認を受けることができず建て替えが認められないものです。総務省の「平成20年住宅・土地統計調査」によれば、東京都だけでも「敷地が道路に接していない」住宅が112,200戸にのぼっています。さらに、「幅員2m未満の道路に接している」住宅も223,200戸あり、このうちの大半が不適合接道に該当するものと考えられます。なお、全国合計では「敷地が道路に接していない」住宅が1,171,800戸、「幅員2m未満の道路に接している」住宅が2,304,700戸となっています。
不適合接道の土地は都心部の木造住宅密集地域に多くみられ、大規模災害時には大きな支障ともなりかねません。しかし、老朽化した住宅を建て替えることだけではなく、大規模な修繕も難しい場合が多いため、このような土地を売却することも困難です。ときどき不適合接道の土地が周辺相場の5分の1、あるいは10分の1といった価格で売り出されることもありますが、なかなか買い手は付かないケースが少なくありません。また、敷地面積が狭いことも多いため、仮に売却できても売主の手元に残るお金は少なく、「それだったら放置しておこう」と考える所有者が多いことも想像できるでしょう。
隣接する老朽空き家が不適合接道の場合には、これを買い取ったうえで自らの土地と一体で売却することも一つの方法です。土地をまとめることで全体が適法になれば、周辺相場に合わせて売却をすることも可能です。もちろん、それを実現するためのハードルはかなり高いと言わざるを得ませんが…。
行政側の対策は?
すでに傾きが生じているような老朽建物も少なくない
家計の問題などで固定資産税を負担できない世帯には一定の配慮をしたうえで、「一定期間を超える空き家には軽減措置を適用しない」といった法改正も必要だろうと考えられます。また、それと同時に「老朽化した住宅を解体すれば、それから一定期間は土地の固定資産税を軽減する」としても、自治体の税収が実質的に減ることはないはずです。
一方で、独自の条例により老朽化した空き家の対策に取り組んでいる自治体もいくつかあるようです。報道で紹介された事例では、空き家を含む一帯の再開発への支援、空き家の解体費用を自治体が肩代わりするのと引き換えに土地を寄付してもらう制度、危険性の高い空き家などでの行政代執行による解体、空き家管理の義務付けなどがありました。
しかし、自治体の条例による対策には限界もあり、老朽空き家の問題には国がしっかりと法整備をして後押しすることが欠かせません。規模の大小にかかわらず、土地の再編、再配置を促すような制度も必要です。
所有者が不明の場合や財産権の保護などが問題として挙げられ、行政側が思い切った対策に乗り出せないケースも多いようですが、所有者が不明であれば固定資産税などの負担義務も果たされていないはずですから、それなりの対応も検討してしかるべきです。
また、上記の不適合接道の場合には、法律によって再建築を禁じられた土地に、法施行(昭和25年)よりも前の、戦前あるいは戦後の混乱期に建てられた住宅も多く、その老朽化対策には国の施策として一刻も早く臨まなければなりません。不適合接道の土地を隣接地と一体化した場合には、何らかの優遇措置を講じることなども考えられるでしょう。
いずれにしても、老朽化した空き家はさまざまな問題を抱えています。前ページで説明した近隣への影響もありますが、直下地震が懸念されている首都圏だけでなく、全国の都市で防災対策上の課題として早急に取り組むことが望まれます。
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