中小企業でも簡単に利用できる会計ルール
非上場会社である中小企業にとって、上場企業向け会計ルールは必要ありませんが、これまでは中小企業でも簡単に利用できる会計ルールというものがありませんでした。中小企業は、経理人員が少なく、高度な会計処理に対応できる十分な能力や経理体制を持っていません。また、決算書などの会計情報の開示先も、課税当局、金融機関、同族株主、取引先に限定されており、会計処理も法人税法に定める処理が行われている場合が大半です。
そこで、すべての中小企業が実際に活用できる簡単なものとして、「中小会計要領」が策定されました。
「中小指針」と「中小会計要領」との違いは?
実は、中小企業向けの会計ルールは、「中小会計要領」のほかに、「中小企業の会計に関する指針(以下、「中小指針」)があり、中小企業はどちらでも参照することができます。「中小指針」は、会計専門家が役員に入っている会計参与設置会社に拠ることが適当とされているように、一定の水準を保った会計処理を示したものです。
参照:www.nichizeiren.or.jp/taxaccount/pdf/checklist080522.pdf
一方の「中小会計要領」は、「中小指針」に比べて簡便な会計処理をすることが適当と考えられる中小企業が利用することを想定して策定されたものです。
参照:http://www.nichizeiren.or.jp/taxaccount/pdf/youryouchecklist120327.pdf
「中小会計要領」のほうが、中小企業の実態に配慮されていて、税制との調和や事務負担の軽減を図る観点から、多くの中小企業の実務で使われている基本的な14項目の会計に限定されています。また、「税効果会計」や「組織再編の会計」等は盛り込んでいません。
「中小会計要領」を活用することのメリット
実務においては、『「中小会計要領」の適用に関するチェックリスト』に従って計算書類の作成を行いますが、このチェックリストを作成するのは、会社ではなく税理士等です。このチェックリストを活用することで、対外的に決算書の信頼性が向上し、金融機関、取引先等から信頼され、スムーズな資金調達や取引先拡大につながることがあります。
さらに、「中小会計要領」を活用することで、政府系の金融機関である日本政策金融公庫からの資金調達において、優遇制度が設けられています。
○中小企業事業における「中小企業会計活用強化資金」融資制度の創設
「中小指針」または「中小会計要領」に準拠した決算書の作成および期中における資金計画管理等の会計活用を目指す中小企業に対し、優遇金利(基準金利▲0.4%)で貸付を行う融資制度
参照:http://www.jfc.go.jp/c/jpn/search/63.html
○国民生活事業における中小企業会計関連融資制度
「中小指針」または「中小会計要領」を適用している方または適用を予定している方について、各融資制度に定める利率を▲0.2%優遇
参照:http://www.jfc.go.jp/k/tyuushou/tyuushoukaikei.html
注意点は、両制度ともにチェック項目の全てについて準拠する必要があります。ただし、必要確認項目のうち該当する勘定科目の残高がない場合または確認事項に該当する事実がない場合は「無」でも構いません。
「中小指針」については、信用保証料の割引制度あり
中小指針に準拠して作成される中小企業の計算書類について、税理士等により『「中小指針」の適用に関するチェックリスト』が提出された場合、信用保証協会の保証料0.1%の割引が認められる制度(中小企業会計割引制度)があります。参照:http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaikei/2012/0322Waribiki.htm
この割引制度について、平成24年4月1日から適用条件が変更されました。
これまではチェック項目15項目のうち1項目以上の準拠によって割引が認められていましたが、これからは全ての項目が「中小指針」に準拠する必要があります。
なお、信用保証料の割引制度については現在のところ『「中小指針」の適用に関するチェックリスト』のみ適用があります。「中小会計要領」については適用がありませんので、ご注意ください。