破産の危機にあった賃貸住宅の再建プランを作り実行
相談を受けて私たちがまず行ったのは、金融機関に事情を説明し、借り換えを行って金利を減額してもらう交渉でした。交渉のためにキャッシュフローが黒字化するような事業計画書を作成します。まずは家賃収入を増やすために、20%の空室率を3%まで下げることを計画しました。そのためには入居希望者に建物の古さを感じさせないよう、現状の建物に手を入れなくてはなりません。一つ一つの建物を診断し、必要な修繕の項目を洗い出します。計算すると、全ての建物をフルリフォームした場合、1棟あたり1000万円、合計で5000万円が必要だとわかりました。しかし、元々キャッシュフローが苦しくて相談に来られているのですから、そんなお金があるはずもありません。そこでリフォーム屋さんと再度内容を見直し、
- 現状で今すぐ手を入れなくてはならない項目(鉄部の塗装など)
- これから4、5年の間にやるべき項目
- すぐにやる必要はないが、やれば物件の付加価値が高まる項目
カラーコーディネートを統一感のあるものにするだけで、見た目の印象はだいぶ変わってくるのです。植栽や照明計画など、あまりお金をかけなくともできることにも積極的にチャレンジしました。
オーナー自身に学んでもらった「ガーデン・コーディネート」
植栽は費用以上の大きな効果
女性オーナーはこれまで、亡くなったお父さんから毎月10万円のお小遣いをもらっていたのですが、お父さんの死後、「そんな状況じゃない」ということで、息子さんにお小遣いをゼロにされていました。それで「好きなことが何もできなくなってしまった」と嘆いていたのですが、ガーデン・コーディネートの勉強をして、自ら市場に出かけて木を仕入れたり花壇を整えたりするうち、ガーデニングが女性オーナーの新しい趣味となったのです。
庭にすてきなパーゴラを置き、そこに黄色いバラをからませたり、ある建物ではエントランス全体にバラを植えて、建物の名前もバラにちなんだものに変えました。この植栽計画が功を奏して、老朽化していた建物のイメージが一変したのです。
オーナーさんは、今では「植木や花の手入れやアイデア作りが楽しくてしょうがない」と言っています。
こうした努力によって空室率は下がり、家賃収入も持ち直してきました。リフォームのために新たにローンを組まなければなりませんでしたが、その費用は十分に回収することができたのです。銀行も金利の減免に協力してくれることになり、とうとうキャッシュフローの黒字化に成功したのです。
こうして、それまではお荷物でしかなかった5棟の不動産は、今では母子の生活を支えるすばらしい建物に変身したのでした。
この女性オーナーは今でもたまに、自ら植えた花の鉢植えをお持ちになって、私のところに顔を出してくださいます。私としても植栽計画の大切さを再認識することになった経験でした。