空室対策に有効な「植栽」

重要な建物外観

入居希望者は外観でも判断

オーナーさんから空室対策の相談を受けたとき、私が現地で真っ先に見るポイントは建物の外観と植栽です。なぜなら、入居希望者が物件の前に立って最初に目にするものだからです。

手入れの行き届いた植物たちが訪問者を迎えてくれるような建物は、グレードが高く感じられるものです。植栽については初期費用はそれほどかかりませんが、維持するには手間がかかります。世の中一般のアパートやマンションでは、建築当初にこそ植栽を計画しますが、その後はきちんと手入れをしないで放置している例が多くみられます。最初に植えた木が枯れてしまったのに、植え替えもせずにそのまま放置し、土がむき出しになっていたりします。さらに、そこにゴミが捨てられているようなケースも見かけます。

オーナーさんご自身が手入れすることが理想ですが、それができない場合は人に頼まなくてはなりません。けれども空室対策として考えれば、投じた手間や費用以上の効果があるものです。

負の遺産だった賃貸物件が蘇ったケース

老朽化した建物のリフォームを考える時、植栽計画は費用以上の効果を発揮します。

父親から相続して新たにオーナーさんとなった女性とその息子さんが、私のところに相談にみえたことがあります。都合5棟の賃貸物件を相続したというのです。

このときの賃貸物件は都内の下町にある木造アパート4棟と鉄筋コンクリートのマンション1棟で、どの建物も築20年を迎えようとしていました。ところが、そこから得られる家賃収入が借入金の月々の返済額に足りず、「借金の返済ができない」というのです。

通常は築20年ともなれば、ローンを完済しているか、少なくとも月々の返済額はかなり減ってきて賃貸経営も楽になり、順調に経営ができていればいよいよ収益の黄金期を迎えているはずです。このケースの場合も、5棟の賃貸物件の建築費として残っていたローンは約3億円で、その程度であれば普通キャッシュフローがマイナスになるようなことはないはずでした。

ところが亡くなったお父さんはそれとは別に2億円ぐらいの借金を抱えており、借入額の合計が5億円にもなっていたのです。しかも別口の2億円については建築用のローンではないので、返済額を賃貸事業の経費としてカウントすることも認められません。

返済額が家賃収入を上回り、相続してみると内情は火の車だということが明らかになったのです。

その上、亡くなられたお父さんはこの20年間、どの建物にもほとんど手を入れていませんでした。せいぜい入居者からクレームがあったとか、客観的に見てあまりにひどい個所だけをその場しのぎで修繕しただけだったので、建物は築20年という年数をはるかに超えて、築30年ぐらいに見えるくらい老朽化が進んでいました。

そのため全体の2割が空室となっていました。同じ築年数の物件の相場と比べて安めに賃料を設定しても、内見に来た入居希望者が建物の古さにがっかりしてしまい、なかなか満室にできなかったのです。

賃貸経営では建物の築年数が新しいうちは毎年の減価償却の額が大きく、それが収入から控除されるので、所得税額が低く抑えられます。しかし築年数が経つとともに償却額が少なくなってきて税額が上がります。

また築年数とともに修繕に必要な費用が年々増えていき、空室率の上昇や家賃の値下げで家賃収入は減ってきて、キャッシュフロー的にも苦しくなってきます。このケースでは現状も非常に厳しいのに、これから3年後、5年後となれば、いよいよ危機的な状況に陥るのは明らかな状態でした。