土地活用のノウハウ/入居者ニーズとマーケティング

土地活用の新しいキーワード、それは「高齢者」(1)

少子高齢化の時代では、賃貸住宅の主要顧客である若者層が大幅に減少してゆく一方で、総人口に占める高齢者の割合は、増加し続けていきます。65歳以上の高齢者人口が、現在では22%を超え、5人に1人が高齢者、10人に1人が75歳以上人口という「本格的な高齢社会」を迎えています。高齢者の方たちに住まいを提供することに積極的に取り組めば、時代の要請に対応した、とても有望な土地活用の一つとなります。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

元気な高齢者

若々しく元気な高齢者が増えています

ご存じの通り、今後の日本は人口・世帯数ともに減少していくことが予想されています。すでに少子化によって賃貸住宅の主要顧客である若者層が大幅に減少しています。この影響による賃貸需要の減少が、オーナーさんが抱える大きな問題となっています。

しかし一方で、総人口における高齢者の割合は増加し続けていきます。これからの土地活用を考える際は、必ず高齢者を対象とする方法を視野に入れておくべきでしょう。今回は、いま最も注目を集めている、高齢者を対象とする土地活用についてお話しします。

高齢者の単身世帯が急激に増えていく

最近、頻繁に耳にしたニュースで「生きていると思われていたお年寄りが、実は何十年も前に亡くなっていた」という報道がありました。テレビや新聞を大いににぎわせたことから、まだ記憶に新しいことと思います。身の回りを取り巻くご家族や知り合いの問題もありますが、一人でお住まいのお年寄りが増えていることも、そんな悲しいニュースの要因になっていると思います。

高齢者推移と推計

高齢者の推移と将来推計

昭和25年には総人口の5%に満たなかった65歳以上の高齢者人口が、現在では、まさに22%を超え、5人に1人が高齢者、10人に1人が75歳以上人口という「本格的な高齢社会」を迎えている日本。しかも以前は常識であった祖父母・夫婦・孫といった、サザエさんのように3世代が仲良く同居する形態は減り続けています。今後は高齢者の一人住まい、あるいは高齢者の夫婦二人といった家庭が増え続けることになります。

今後増え続ける高齢者の方々の住まいの問題に、行政は真剣に取り組もうとしています。オーナーから見た場合、高齢者の方たちに住まいを提供することは、健康の問題、所得の問題など、さまざまな懸念があります。けれども、人口や世帯数の将来推計から空室がいっそう増えると予想される今、積極的に取り組めば、時代の要請に対応した、とても有望な土地活用の一つとなります。

「高齢者のための住宅」にはさまざまな形態があって複雑

「高齢者のための住宅」といっても、いろいろな形態があり、特にこれが高齢者の住宅という決まった定義があるわけではありません。

たとえば、バリアフリーに対応した賃貸マンションを作ったところそれが評判になって高齢者の方が多く住んでくださっているといったものから、最新の介護施設や病院機能などの手厚いケアが付いたものまで、実に様々です。

分類するにしても、「施設の形態」で分けるか、「介護が付くか付かないか」で分けるか、あるいは介護がある場合は「入所型」か「在宅型」か、などがあり、なかなか分かりづらい状況です。また、一時金を入居者から頂く「終身利用方式」でいくのか、通常の賃貸マンションのように家賃をいただく「終身賃貸方式」であるか、という分類もあります。

また行政の福祉施策の観点からは、厚生労働省において普及を進めている特別養護老人ホームなどの施設やグループホームと、住宅施策の観点から国土交通省において普及を進めている高齢者向け賃貸住宅に大きく分けられます。

厚生労働省は介護財政の逼迫を背景に平成24年3月末を目処として療養病床の廃止・削減をあげています。それにともない大量の「介護難民」が生まれる可能性があり、その対応として民間の高齢者向け施設・住宅市場の拡大を歓迎する傾向があります。

皆さんの土地や、建物を借り上げてくれる運営主体も、社会福祉法人やNPO法人だけではなく、市場の拡大を見越した民間企業も積極的に参入してきています。
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