パン/パン屋さん取材レポート(西日本)

ベッカライ ビオブロート【芦屋】(2ページ目)

芦屋で7周年を迎えたベッカライビオブロートはドイツのマイスターの資格を持つ松崎太さんのお店。お店のパンはほとんどがオーガニックの全粒粉100%のパン。ここだけにしかない、香ばしく滋味豊かな味わいのパンの魅力に迫ります。

清水 美穂子

執筆者:清水 美穂子

パンガイド

全粒粉のパンのおいしさの秘密

全粒粉、それも100%といったら栄養価が高く、食物繊維も豊富で健康に良いかもしれないけれど、口の中でボソボソするのでは、などと少しは思っていたのです。しかしそれはすぐに覆されました。しっとりとして口解けがよいのです。それはどうやらパンに加えている水の量に鍵があるようです。
松崎太さん

松崎太さん

「戦後、ドイツでも機械化が進んで、扱いやすいようにとパンの水分量を少なくしているし、発酵時間を減らすためにイーストフード(添加物)が多用されるようになってきています。どこもそういうものなのかと思ったら、行列ができているパン屋さんがあって、そこのパンは昔ながらの製法で水分量が多く、しっとりしていたんです。昔は加水率が高く、生地を柔らかくして、発酵時間もきちんととってパンを作っていたんですよ」。
パンを分割

パンを分割

温故知新。パンの進歩の方向性は知恵を使っていた昔にあると思う、という松崎さんは古書店を巡り、昔の資料を原書で読み、日本へも専門誌を取り寄せています。そして水分量の話は続きます。

「全粒粉は水をゆっくり吸うので、先の様子を見越して生地を仕込む必要があります。加水はだいたい89~90%かな。湯種(小麦粉の一部をお湯で溶く製法)でも調整しています。もともとヨーロッパで行なわれていた、先人の知恵ですね。吸水は麦によって違うし、年によって違うんですよ」。
午前2時頃からお昼前まで、工房で働く

午前2時頃からお昼前まで、工房で働く

松崎さんは仕入れた玄麦を毎日、翌日に使う分だけ製粉しています。挽きたては熱を持っているため一日置くのですが、時間が経てば酸化してしまうからです。

挽く前に、精米機を使って麦の外皮を磨くような感じで、ジャリジャリした食感にならないようにする方法は、今はなきブノワトンの高橋さんに学んだといいます。そして粉は細挽きにすると、香りが良くなるのだそうです。
フォルコンブロート(640円)

フォルコンブロート(640円)

フォルコンブロート断面

フォルコンブロート断面


  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます