土地購入/より良い土地購入の方法・選び方

土地を購入するときの資金計画のポイント

住宅ローンはほとんどの金融機関で取り扱っていますが、それはあくまでも「住宅」が存在することを前提としたものです。土地を購入するときには、通常の住宅ローンが使えないこともありますから事前によく確認するとともに、建築工事までを含めた全体の資金計画をしっかりと立てることが大切です。(2017年改訂版、初出:2012年4月)

執筆者:平野 雅之


建売住宅や新築分譲マンション、中古一戸建て住宅、中古マンションを購入するときには、売買契約のときに支払う手付金プラスアルファの自己資金があれば、残りの代金は住宅ローンを充てることができます。ときには自己資金がほとんどなくても買える場合もあるでしょう。

しかし、土地を購入して家を建てようとする場合には、さまざまなタイミングでお金の支払いが求められるため、単純に「手付金さえあれば」というわけにはいきません。

どのような費用が必要なのかは ≪土地購入にかかる費用の種類とあらまし≫ をご覧いただくとして、今回は、土地を購入するときに知っておきたい資金計画のポイントと注意点などについてみていくことにしましょう。


土地購入資金だけのローンは難しい

土地

一般的な住宅ローンは、「住宅」がなければ難しいことが多い

住宅ローンはほとんどの金融機関で取り扱っていて、とくに現在は超低金利で貸し出し競争をしているような状態ですが、これはあくまでも住宅と、それに伴う土地の購入を対象としたものです。

住宅がまだ存在しない時点で土地だけを購入するなら、その資金を融資してくれる金融機関はかなり限定されるのが実情でしょう。

その背景にはもちろん担保の問題もあるほか、「違反建築物には融資できない」といった金融機関側の事情もあります。

すでに住宅が完成し検査済証を取得していれば、違反建築物ではないことを客観的に判断できますが、これから住宅を建てる段階では必ず合法的な住宅が建つという保証は得られません。

また、現在ではその懸念は小さいものの、過去のバブル期において土地の転売が社会問題化したことも、金融機関が土地購入資金の融資に慎重とならざるを得ない一因だと考えられます。

一部の信託銀行や地銀などでは、土地購入資金に充てることのできるローンを取り扱っていますが、その貸し出し条件は金融機関ごとに異なります。

土地の購入にあたり、純粋に土地購入資金として融資される場合だけでなく、速やかに住宅の建築工事がされることを前提に住宅ローンの一部実行分として土地購入資金が融資される場合、住宅が完成して住宅ローンが実行されるまでの「つなぎ融資」として土地購入資金が融資される場合などもあるでしょう。

また、金融機関によっては初めから住宅ローンとして取り扱い、土地の決済時、建物の前払い金支払い時など段階に応じて「住宅ローンの一部融資」で対応してもらえるケースもあります。


購入する土地を決める前の準備が大切

ところが、土地購入資金の融資申し込みにあたって、建築する住宅の設計図面や工事見積書の提示を求められる場合、あるいは建築工事請負契約書の提示を求められる場合などもあります。

土地を購入する時点では、これから建てる住宅の詳細が決まっていないことも多いため、なかなかハードルが高いといわざるを得ないでしょう。

さらに土地購入資金の融資を受けた後には、金融機関のほうから「早く住宅を建ててください」と急かされることも少なくないようです。土地を買ってから、「納得できるまでじっくりと住宅のプランを検討して……」というわけにはなかなかいきません。

いずれにしても、土地購入資金に融資を充てようとするときには、土地の売買契約をしてから金融機関を探したのでは思いどおりにいかないことも多いため、土地の購入を決める前にいくつかの金融機関をあたり、それぞれの貸し出し条件などを詳細に確認しておくことが大切です。

また、土地購入資金のローンは、通常の住宅ローンより金利が高く設定されることもありますから、事前にしっかりと確認しておかなければなりません。

媒介業者が土地購入に適した金融機関を紹介してくれる場合もあるため、資金面での相談はなるべく早い段階で行なうようにしましょう。


建築計画と合わせたトータルな資金計画も必要に

都市部の更地

建築工事は依頼先によって資金の段取りが大きく異なるため要注意!

土地購入代金をすべて自己資金でまかなえる場合でも、土地購入後に残った自己資金が少なければ、その後の建築工事に支障をきたすことがあります。

建築工事の依頼先によっても大きく異なりますが、建築工事請負契約時に着手金として請負金額の20~30%、建物の上棟時に同じく20~30%が必要になる場合もあります。

金融機関によっては、これらの費用を住宅ローンの一部として分割実行してくれるケースもありますが、それがない場合には自己資金を多めに残しておくことも考えなければなりません。

さらに住宅の設計を第三者の建築士などに依頼したときの設計料や、建築確認申請費用、古家付土地だったときの解体工事費用や測量費用、地盤調査費用で買主負担とされたものなど、土地購入代金や建築工事代金以外に必要に応じて随時、支払いを求められるような費用もあります。

住宅の建築工事から引き渡しを受けるときまでを見据えて、トータルの資金計画を事前によく確認したうえで、自己資金と借入金の配分を考えることが欠かせません。

どのようなローンの形態になるのかは融資を申し込む金融機関によっても異なりますから、とくに自己資金が少なめでローンへの依存割合が高いときには、金融機関との事前相談や資金計画の詳細なチェックを第一優先に検討していくようにするべきでしょう。

また、少し古めの中古住宅を通常の住宅ローンによって購入し、しばらく何年か住んでから建て替えを検討することも、一つの選択肢として考えられます。


父母などからの資金贈与を活用する

父母や祖父母などから住宅購入資金の贈与を受けた場合の特例(直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置、および、特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例措置)については、2011年度の税制改正により、住宅の建築に先行して取得する土地の代金に充てる場合でも適用できることとなっています。

ただし、この場合でも贈与された年の翌年3月15日までにマイホームを建てなければならないという要件がありますから、この特例を使おうとする場合には建築のスケジュールを十分に検討したうえで、それから逆算して早めに土地を購入することが必要となります。

住宅取得資金の贈与に関する特例の適用期間は2021年12月31日までとなっていますが、2019年10月に予定される消費税率の再引き上げに伴い、非課税枠も変更される予定です。

省エネ性または耐震性を満たす住宅の場合における非課税枠は、2019年3月31日までが1,200万円、2019年4月1日から2020年3月31日までが3,000万円、2020年4月1日から2021年3月31日までが1,500万円、2021年4月1日から2021年12月31日までが1,200万円となります。

ただし、要件を満たさない一般住宅については各年とも500万円を減額したものが非課税枠となるほか、10%の消費税を負担しない場合(8%のとき、または消費税がかからない中古住宅のとき)には、非課税枠が大幅に減額されますから注意しなければなりません。

この特例を使わずに土地購入資金などの贈与を受ければ、多額の贈与税がかかることにもなりかねないでしょう。そのようなときには、土地と建物を親との共有名義にする、あるいは土地を親の名義にして、そこに建てる住宅を子の名義にするなどの方法も検討することが必要です。


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