メンタルヘルス対策の切り口「1~3次予防」
企業のメンタルヘルス対策の切り口は厚生労働省が提唱している「4つのケア」以外に、予防という観点から1次予防、2次予防、3次予防という整理の仕方もあります。この整理は、地域精神医学で有名なキャプランが提唱したものです。もともとは地域の精神障害者の発生を予防しながら、不幸にして発生した場合は早期に発見・早期に治療し、地域住民の力を活用して早期に社会復帰を図るという一連のプロセスを示したものでした。企業社会においては、メンタル不調者が発生しないということはまずあり得ないので、この「1~3次予防」の切り口は実践的で分かりやすいものとなっています。
企業では「4つのケア」の切り口でいろいろな対応策を検討されていると思いますが、それを「1~3次予防」の切り口で表にして整理してみることをお勧めします。1次予防策はある程度できているが2次予防策は不充分であるといったことが、一目瞭然です。私が企業のコンサルティングをする時は、「4つのケア」ではなく「1~3次予防」の切り口で質問して、企業のメンタルヘルス施策の不備を明らかにしています。
■1次予防(メンタル不調者発生の予防と未然防止)
従業員のストレスチェックとセルフケア教育、管理職へのラインケア教育、適切な労働時間管理、過重労働防止策、ワークライフバランス(仕事と生活の両立)支援策、外部のEAPの活用などが含まれます。
■2次予防(メンタル不調者の早期発見・早期対応)
メンタル不調者の見分け方など管理職に対する研修の実施、早期対応のための社内体制の整備などが含まれます。
■3次予防(メンタル休職者の早期復職支援と再発防止)
休職期間中の休職者に対するフォロー方法、休職・復職判断基準の設定、休職・復職判断のための社内体制の構築、休職・復職支援(外部機関に休職者のサポートを依頼するなど)、休職・復職規定の整備、再発防止策などが含まれます。