今後の国の財政に重たい負担となるコロナ対応
収束の兆しが見えない新型コロナウイルス感染症の影響による、定額給付金や休業補償、企業への雇用調整助成金など、これまでの財政出動は著しく巨額です。内閣府の発表によると、2022年度の国の財政収支は総予算107兆6000億円のうち、34.3%の36兆9000億円が借金(国債)により調達されます。これまでの国と地方をあわせた債務残高は、2022年6月末時点で1255兆円となりました。
これまでと今後のコロナ対策資金は、そのほとんどが国の借金によるものです。日本は主要先進国の中でも、国全体で1年間に稼ぐ力であるGDP(国内総生産)に対して借金の比率は257%近くなり、アメリカの133%やフランスの116%を大きく上回り、ダントツでトップの債務比率となっています(財務省HPより※2021年10月時点)。
【参考】財務省
https://www.mof.go.jp/zaisei/current-situation/situation-debt.html
https://www.mof.go.jp/zaisei/current-situation/situation-comparison.html
これらの負担の先送りが、今後の公的年金への影響や増税などと、私たちのセカンドライフに大きな影をさす可能性を高めています。したがって、自分たちの老後が公的年金だけで賄うのは厳しい状況になったら国が何とかしてくれる、と考えるのは無謀ともいえます。
続けて公的年金の状況を見てみましょう。
公的年金の財政状況は構造的な赤字が続く
現在の年金財政は、大きな赤字運営が続いています。2020年度の公的年金の収支状況を見ると、収入になる年金保険料は38兆6000億円、支出にあたる年金給付は53兆3000億円で差引きでは14兆7000億円の大きな赤字です(厚生労働省HPの「公的年金の単年度収支状況(2020年)」より)。 少子高齢社会が進んでおり、年金保険料を負担する若い世代の比率が減少し、年金を受け取る高齢者の人口が増加する日本の人口構造のバランスにより、現在でも年金収入の約1.38倍以上の年金支給をしていますが、今後はさらに財政が苦しくなってきます。2020年度はこの赤字を埋めるために国庫の負担(13兆1000億円)と、年金積立金(積立総額約234兆円※2020年度末時点)から取り崩しを行いました。
家計に例えると、恒常的に大幅な赤字家計で、お金が足りない部分については親から出してもらいつつ、さらに不足する部分は貯蓄を取り崩すという状況です。
年金の積立金を管理運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」は、積立金で国内外の株式や債券などで年金資産を運用し、収益を出そうと一生懸命です。
この運用での2001年度~2022年第一四半期までの成績は、年率3.56%と健闘していますが、リーマンショックなどの経済危機や2020年のコロナショックの際には、それまでに上げた収益も大幅に減少しました。今後もこれまでのように約3%ずつの収益性を維持できるかはわかりません。
このような年金財政を立て直すために、年金財源を確保するべく消費税を2019年10月に10%に引き上げましたが、増額分は少子化対策等の他の財源としてほとんどが充当されたため、今後、さらなる増税は避けられないと思われます。
また年金収入を増やすために、2016年10月以降、パート労働者を中心に厚生年金の適用が拡大されています。段階的に年収106万円以上のパート労働者で従業員数501人以上(現在の厚生年金適用者)から、2022年10月に101人以上に引き下げ、2024年10月には51人以上に適用がなされます。
超少子高齢社会を迎えてますます厳しくなる日本の年金財政を支えるために、個人・企業・国の負担が年々高まっていきます。
しっかり準備したい自分年金
上記のような状況から公的年金や会社の退職金への依存度を下げながら、自分自身で着実に準備する「自分年金」の必要性がより高まっています。「自分年金」とは、預金・資産運用・個人年金保険などの金融商品を活用した資産形成のことです。仕事をリタイアするまで時間はたっぷりあるから、まずは目先の子育てや住宅ローンの返済が終わってから、自分年金の準備をしようと考えるのは黄色信号です。
なぜなら、子どもが大学を卒業して自立する時や住宅ローンの返済が終わる時の自分自身の年齢が、実際には仕事をリタイアする間際かリタイア後だったりするからです。
このようなことから定年退職間際でセカンドライフ資金の準備ができていなくて、「しまった!」ということがないように、少ない金額でもいいので他の預貯金などと区分けして、なるべく早めに準備に取り掛かりたいところです。
マネープランを立てて、より効率的な資産形成
セカンドライフの資産形成を始めるといっても、なんとなく漠然といつからいくらをどうやって貯める?ということになりがちです。そうなると貯蓄などを継続する意志も弱まり不安定になる可能性があります。そうならないためにも、自分自身の人生のマネープランを大まかでもいいので作って、全体像を眺めながら、最適な資産形成の作戦を立てるのが効果的です。
人生のステージに沿った、一般的なファミリー世帯のお金との関わり方の一例は次のとおりです。
<30代>お金をしっかり貯める時期
まだ子どもが小さく、子育て費用や教育費の負担が小さい時期で、マイホーム購入前なら住宅ローンの負担もなく、貯蓄力が強い時期です。30代を迎えたらセカンドライフの資産形成に本格的に着手しましょう。早く始めるほど後半がラクになります。
<40代>お金を借りる時期・貯める時期
30代後半から40代にかけてマイホームの購入時期を迎えます。住宅ローンを借りて返済しつつ、子どもの教育費の準備と自分たちのセカンドライフ資金のための貯蓄・資産形成をコツコツ頑張りたい時期です。
<50代>前半-お金を使う時期・後半-お金を増やす時期
50代前半は子どもが大学に通う時期で住宅ローンの返済もあり、家計は年間の収入だけではやりくりが厳しくなり、貯蓄の一部を取り崩さざるを得ない場合も多く踏ん張りどころです。
一方で50代後半は、子どもの自立とともに教育費の負担がなくなり、家計が再び黒字化する時期です。子育てから解放されて夫婦のための時間やリフォームなどにお金を使える時期ですが、リタイア後の資産形成に向けてラストスパートの時期です。お金を貯めながら、効率良くかつ安全性を高めてお金を増やしたい時期でもあります。
<60代>お金を使う時期・守る時期
60歳でリタイアをするか、一次定年をした後に再雇用や再就職する方もいます。いずれにしても収入が減少することが多いです。自由な時間も増えますので、お金を自分たちのために使っていきたい時期です。
同時に年金の給付が開始するまでは、蓄えたお金や退職金などの一部を賢く運用し、配当収入などを確保しつつ、なるべく蓄え自体を減らさずに守りたい時期でもあります。
上記はあくまで一般例です。自分のマネープランがあると、人生の中での貯蓄の力の入れどころや我慢のしどころ、どのような金融商品をそれぞれのステージで活用したらいいのかなどの、イメージをよりつかみやすくなり安心感も増します。
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