食と健康/「食」の安全・社会問題・ニュース

食品ロスを減らすために、私たちができることは?(2ページ目)

私たちが生きる上で不可欠な食べ物。日本では、毎年500万~900万トンの食品ロスが出ています。今回は、食業界の取り組みや消費者は何ができるのかについて考えてみたいと思います。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド


行政や事業者の発生抑制にむけた取り組み

当日のシンポジウムでは、自治体と連携した事業者の取り組みの事例報告や、製パンメーカーやレストランチェーンでの取り組み事例が紹介されました。

ごちそう

旅館では豪華な料理が当たり前。でも食べきれないのはもったいないです。

山崎製パン株式会社では、例えば食パンの耳を原料としてラスクやチョコ菓子に、またケーキスポンジ切り落としから別のスイーツにするなどの有効利用の事例、またパンの耳や規格外品などの未利用食品を家畜の飼料に(エコフィード利用)、さらにエコフィード利用畜産物からパン・弁当類に製品化するシステムが紹介されました。

またサトレストランシステムズ株式会社では、ロス管理の徹底、準備数量の多頻度少量化、ごはんの量をお客様に選べる仕組みの導入など、様々な工夫で食品ロスを削減に取り組んでいます。例えば餃子を3つ焼くのも、6つ焼くのも、手間は同じですので、効率を考えれば一度にたくさん焼きたいわけですが、注文に応じて少量ずつ焼くことが食品ロスの発生抑制につながり、お客様にとってもおいしく食べていただくことにつながります。

各地方自治体でも、千葉県、長野県、福井県、山口県、富山市、新発田市などの食べ残し削減運動などが紹介されました。自治体でも食べ残し削減をHPやパンフレット、ポスター、地域メディアなどを通じて啓発し、協力店を登録しPRするなどの啓発活動を共同で取り組むほか、廃食用油のバイオディーゼル燃料化や飼料・肥料の自給等のエネルギー循環のシステムに取り組む自治体もありました。地域での取り組み事例は、農林水産省のサイト「食品ロスの削減にむけて」のページでも紹介されています。

「旅館の料理は贅沢」の意識を変える

特に興味深かったのは、山口県の観光ホテルの事例です。ガイドはいつも温泉旅館やホテルに宿泊すると、食べきれないほどの量が出てくるため、あらかじめごはんをお断りしたりするのですが、それでも食べきれないのがたいへん心苦しく思っていました。

もてなしの文化としては「食べきれないほどにおだしする」ことが重要な意味があるのでしょうが、「おいしく食べきれる」という価値感も、今後は重要視されてもよいのではないかと考えています。

山口県のある観光ホテルでは、「ヘルシー会席」という献立を設定されました。通常の会席料理のコースですと、だいたい2,000kcalくらいになるのですが、この「ヘルシー会席」は量やメニューを工夫し1,000kcalと約半分。HPなどでこのプランの詳しい品書きの説明と料理写真を掲載したり、お客様の希望のごはんの量など、きめ細かな聞き取りを行いました。食品ロスが減るというだけでなく、旅館の料理=豪華・贅沢という考え方が変わった、事前に情報を受発信することでお客様とのミスマッチが減少、食品ロスに対する社員の意識づけが強くなったなどの効果が見られたそうです。

関西温泉地、有馬のある旅館でも、量が食べられない高齢者向けに、会席料理の量を減らし、その分価格も休めに設定したプランが好評で、平日でも人気を博している事例もあります。このようにまだまだ一部の先進的な事例とはいえ、近年事業者が食品の再生利用や食品ロスの削減に真摯に取り組んでいることは皆さんも感じておられるのではないでしょうか。

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