ベルサイユ宮殿の歴史 1.都市から国家へ
ラトナの泉から緑の絨毯、グラン・カナルを眺める。もちろん当時は電力を用いず、水力によるポンプで水を持ち上げ、高低差を利用して水を噴き上げさせた
中世、庶民にはあまり「国」に所属しているという意識はなかった。人々は土地を持った諸侯や騎士・教会、あるいはギルドと呼ばれる職人組合に所属しており、それぞれの地方勢力や都市が独立した国家のように機能していた。
ラトナの泉。噴水ショーの時間に華麗な噴水を見学することができる
ルイ13世の宰相リシュリューやルイ14世の財務官コルベールは、フランス東インド会社をはじめ世界各地に植民政策を進め、工場を造って経営を行い、輸入品に関税をかけて国内産業を守り、大きな利益を生み出した(重商主義)。地方都市では到底太刀打ちできないこうした富を背景に、国家は強力な軍隊を作り、諸侯や騎士・ギルドに爵位を与えて取り込んで、ひとつにまとめあげていく。
ベルサイユ宮殿の歴史 2. ルイ14世と絶対王政
南花壇から見上げたベルサイユ宮殿。左の建物の中に鏡の間がある ©牧哲雄
そしてルイ14世はベルサイユ宮殿を建築し、王の住居はもちろん、政治機能や貴族・官僚たちの住居もここに移し、フランスのすべての力をこの宮殿に集中させる。
マリー・アントワネットが愛人ハンス・フェルデンと密会していたという愛の殿堂。彫刻はキューピッド
そして絶対君主や啓蒙専制君主たちはベルサイユ宮殿にならい、権力が集まる巨大な宮殿を建築した。