フランスの世界遺産「ベルサイユの宮殿と庭園」

ベルサイユ宮殿のエントランス

ベルサイユ宮殿の広大なエントランス。宮殿は両翼を大きく開いて悠々と人々を迎え入れる ©牧哲雄

太陽王ルイ14世は、自分が神の子であり、自然をも征服する王の中の王であることをベルサイユ宮殿によって見せつけた。そして世界中の絶対君主や啓蒙専制君主たちがこれをまね、後に世界遺産として登録されることになる数多くの宮殿を築くことになる。

今回は絶対王政の象徴であり、世界でもっとも華麗な宮殿といわれるフランスの世界遺産「ベルサイユの宮殿と庭園」を紹介する。

「宮殿の中の宮殿」ベルサイユ

平面幾何学式庭園

宮殿と並ぶベルサイユのハイライト、アンドレ・ル・ノートルによる平面幾何学式庭園。整然と並ぶ水と緑が美しい

王や王の一族、貴族たちが住む御殿を宮殿という。世界中に王様や貴族がいて、世界中に宮殿があるが、「宮殿の中の宮殿」といえばベルサイユ宮殿だ。

その影響力は絶大で、ドイツのサンスーシ宮殿、オーストリアのシェーンブルン宮殿、イタリアのカゼルタ宮殿、スウェーデンのドロットニングホルム宮殿、ロシアのペテルゴフ宮殿、中国の円明園など、18世紀以降に建てられた宮殿は多かれ少なかれベルサイユ宮殿の影響を受けているといっても過言ではないだろう。 

これもすべてルイ14世の狙い通り。
ベルサイユ宮殿南側面

ベルサイユ宮殿南側面。水の庭園、ジャン・バティスト・テュビ作のブロンズ像とよく調和している

「朕は国家なり」。世界に覇を唱えるためにフランスが傾くほどの富を投入して豪壮な宮殿を築き、各地の王たちをこの宮殿に招き、貴族たちを移住させて住まわせ、庭園を庶民に開放して王の力を世界に知らしめた。

「私の中には太陽が宿っている」。荒野を征服して宮殿を建て、自分が神から力を受けて地上を征服する者であることを(王権神授説)、ベルサイユで高らかに宣言した。 

自然を圧倒するベルサイユ宮殿

庭園から眺めたベルサイユ宮殿

庭園から眺めたベルサイユ宮殿。ルイ14世は自ら『王の庭園鑑賞法』と呼ばれる解説書を著し、庭園を開放してその偉大さを見せつけた ©牧哲雄

ベルサイユはもともと王族が狩りを楽しんだ荒野。そこにルイ13世が猟のための宿を建てたことにはじまる。

ルイ14世はもともとパリのルーブル宮殿に住んでいたが、1648年のフロンドの乱でパリを脱出した苦い経験から、新しい宮殿を安全なパリ郊外に建てることに決めた。トイレのないルーブル宮殿の異臭がガマンならかったともいわれるが、ベルサイユ宮殿にもトイレは非常に少なく、人々はおまるを使い、従者に中身を庭に捨てさせた点は変わらない。
王室礼拝堂

白大理石のシンプルな意匠が美しい王室礼拝堂 ©牧哲雄

水もない不毛の荒野だったが、10km離れたセーヌ河岸に「マルリーのポンプ」と呼ばれる巨大な汲み上げ装置を造らせ、水道橋によって水を引いた。木々を伐採し、起伏を平らにならし、土地を直線で区切って自然を幾何学的に切り取った。庭園に身を置くと、「自然さえ征服してみせる」という王の強烈な主張が聞こえてくるようだ。 その威容は以下のマップで確認してほしい。

ベルサイユ宮殿(Googleマップ)