自覚症状がないから生活習慣は改善しない派が半分
生活習慣病の予防、改善を目的とした生活習慣の改善に取り組んでいる人の割合は男性50.4%、女性57.6%でしたが、一方でまだ改善に取り組めていない人も半数近くいるということで、その理由の最も多いのは自覚症状がないからというものでした。 元気で自覚症状もなければなかなか生活習慣を見直すことはしにくいものですし、あまり健康不安を煽るのもよくないとは思いますが、生活習慣病にかかわる動脈硬化などは自覚症状がない時から進行しています。前述にでていたような50歳代前後からは、以前より太ったかなという体の変化や、健康診断のデータの変化などは一つの信号と考えて、食生活や運動などを意識する必要があると思います。また規則正しい生活リズムなどの生活習慣は、若い頃から大切であるのは言うまでもありません。
所得が低いほど、不健康な生活習慣の傾向が
以前取りあげたフードデザート問題の記事で、この問題は地理的かつ環境的に買い物しにくいことと、低所得層などの生活弱者が社会から切り離されたことが重なった時に発生するという指摘がありました。今回の「2010年国民健康・栄養調査」には、そこにつながる「世帯所得」の記述がありました。世帯所得が低いほど、肥満者、朝食欠食、運動習慣がない、喫煙、野菜の摂取量が少ないなどの生活習慣に問題がある人の割合が高くなる傾向があることがわかったのです。
世帯の所得を3区分(200万円未満、200万円以上~600万円未満、600万円以上)に分け、世帯員の生活習慣等(体型、食生活、運動、たばこ、飲酒、睡眠)の状況を比較した結果、
- 肥満者の割合は、男性では差がみられず、女性では200万円未満と200~600万円未満の世帯で高かった。
- 習慣的な朝食欠食者の割合は、男性では200万円未満と200~600万円未満の世帯で高く、女性では200万円未満の世帯で高かった。
- 野菜摂取量は、男女とも200万円未満と200~600万円未満の世帯で少なかった。
- 運動習慣のない者の割合は、男性では200万円未満の世帯で高く、女性では200万円未満と200~600万円未満の世帯で高かった。
- 現在習慣的に喫煙している者の割合は、男女とも、200万円未満と200~600万円未満の世帯で高かった。
- 飲酒習慣者の割合は、男性では200万円未満の世帯で低く、女性では差がみられなかった。
- 睡眠の質が悪い者の割合は、男性では差がみられず、女性では200~600万円未満の世帯で高かった。
前ページの表にも生活習慣を改善する時間的・経済的ゆとりがないという声もあったように、所得が低いために、食費を切り詰めて栄養のバランスを考慮した食事がとりにくい、運動する時間や費用のゆとりがない、また健康診断を受けたり適切な治療を受けることが後回しになったりすることが考えられます。
所得による「健康格差」の拡大は社会的な課題になっています。2013年度から始まる「次期健康づくり計画」では、
「新しい健康づくり運動プランで守るべきターゲットで優先順位が一番高いのは、健康の意識はありながら生活に追われて健康が守れない、また生活に追われるあまり健康にも関心が持てない人々である。今後健康格差が広がる中で、こうした人々の健康に役立つような健康政策や社会環境整備に取り組み、どこまで健康格差が縮小できるかが重要」
平成21年度の国民医療費は36兆67億円、平成20年度の34兆8084億円に比べ1兆1983億円、3.4%の増加となるなど、財政圧迫も懸念されています。長引くデフレ、不況と様々な不安がある時だからこそ、経済的にゆとりはなくても、日々の食事や運動を意識し、大きな病気につながる前に、自分で健康を守ることは重要なことだと思います。
同調査では、平成18~22年にわたる5年分の国民健康・栄養調査データを用い、都道府県別に年齢調整を行い、肥満及び主な生活習慣の状況について比較した結果も発表されています。自分が住んでいる地域は、他の都道府県と比べてどうなのか、ランキングで客観的な評価を見るのも興味深いものです。ぜひご参考になさってください。
参考/
・平成22年国民健康・栄養調査の概要(厚生労働省)
・第3部 その他 第1章 所得と生活習慣等に関する状況 (厚生労働省)
・次期国民健康づくり運動に関する委員提出資料(厚生労働省)
・国民医療費の年次推移(厚生労働省)
関連リンク/
・都市生活者にも無縁ではないフードデザート問題(食と健康)
・1日に野菜を350g食べた方がいいのはなぜ?(食と健康)