わが子が大好きなのに不安やイライラが押し寄せる……
子どもに対する愛情はいっぱい。でも、重いストレスがのしかかると、育児がつらく感じられてしまうこともあります。
一日中世話に追われ、ゆとりのない自由さ。夜泣きや寝ぐずり、かんしゃくに対応し続ける日常。密室の中の育児で社会から取り残される不安、ママ友との付き合いへの気苦労、「この育て方で間違っていないだろうか」という心配……。
こうした育児ストレスは、母親なら一度は感じたことがあるものではないかと思います。しかし、そのストレスが解消されずに続いていくと強い憂うつや不安感に追い込まれ、ついにはいわゆる育児ノイローゼになってしまうこともあります。
心の余裕のなさが育児への自信を失わせることも……
育児ノイローゼを防ぐには、ストレスをためない考え方、生活の仕方を取り入れることが大切です
そのため、子どもが粗相をしたときに「なんでこんなことするの!」と激しい口調で叱ったり、その時の苛立ちから、思いがけず手が出そうになってしまうこともあるかもしれません。後からそんな自分を後悔して、「私は母親失格なのかもしれない」と落ち込み、自信が持てなくなることもあるかもしれません。
自分の心に余裕があれば、子どものいたずらやわがままを受け止め、受け流すことができるものです。しかし、心の余裕は頑張れば持てるようになるものでもありません。ストレスをためない考え方、生活の仕方を取り入れ、自分を追い込まないようにすることが大切なのです。
ここでは、育児ノイローゼの予防に役立つ5つのポイントをしたいと思います。
育児ノイローゼを防ぐ5つのポイント・対処法
POINT1:子どもの「目の前の行動」に振り回されない子ども行動にイライラする原因を振り返ってみましょう
たとえば、一つの物に執着している、同じ行動をずっと繰り返している、イヤイヤを言い続ける、他人の顔を叩いたり髪の毛を引っ張ったりする…。こういう場合、その年齢ならではの発達特徴であることが多いものです。その発達段階を経過すれば、こうした行動の多くは治まっていくでしょう。何年も続く場合、発達の遅れや甘えたい気持ちの強さなどの別の要因が、考えられるのかもしれません。
ベーシックな育児事典、育児書を1冊手元に置いておくと、年齢ごとの子どもの気持ちの理解に役立ちます。ちなみに私のおすすめは、『初めて出会う育児の百科0~6歳』(小学館)です。
POINT2:他人と自分の状況を比べない
「隣の子はちゃんとできるのに、うちの子は……」「隣の夫は協力的なのに、うちの夫は……」というように他人と自分の状況を比べてしまうことで、育児をつらく感じてしまうことがあります。しかし、他人の芝が青く見えても、その人にも周りには見えない別の苦労があるかもしれません。
育児環境や子どもの成長スピード、個性は一人ひとり違います。参考にすることはできても、比べて落ち込んだり、焦ったりする必要はありません。
他人と比べて「自分(わが家、自分の子)が持っていないもの、できていないこと」ではなく、「自分(わが家、自分の子)が持っているもの、できていること」に注目してみましょう。「夫は育児に協力的じゃないけど、うちにはロボット掃除機がある」「うちの子は不器用だけど、素直で明るい子だと思う」というように、それぞれに「持っているもの、できていること」は必ずあるはずです。そこに目を向けていきましょう。
POINT3:理想的な「完ぺきな育児」にこだわらない
物事は「完璧」にやろうと思うほど、完璧にできていないことが目についてしまうものです。育児でも同様です。また、親が完璧にこだわりすぎると、子どもも「そうあらねばならぬ」という思いを持ちやすくなります。
ちなみに、試験(資格試験や単位取得のための定期試験など)では、ほぼ6割ほど正答していれば合格できることが多い、ということをご存知ですか(もちろん個々の試験により違いはあります。おおよその目安です)? これと同じように、自分が満点と考える育児の6割くらいができていれば「合格」、と捉えてみてはいかがでしょう。「満点」にこだわって頑張りすぎるより、まずは「合格点」でよしとする方が、肩の力を抜いた育児ができるのではないかと思います。
POINT4:イライラしやすい「時期」を把握する
自分の心身の状態を知ることは、育児ストレスの軽減に役立つ
特に、出産直後にはホルモンが大きく変動するため、訳もなく悲しくなったり、不安になったり、イライラしてしまうことがあります。これは「マタニティ・ブルー」と呼ばれる一過性の症状です。その後数カ月単位で続く「産後うつ」と呼ばれる症状も、ホルモンの変動と大きく関係しています。
また、排卵から月経前までは黄体ホルモンの影響によって精神的に不安定になりやすくなりますし、月経中には貧血になりやすく、倦怠感や疲労感が訪れやすくなります。
こうした体調の変化が起こる時期には、気持ちにも余裕を持ちにくくなるため、子どもの些細な行動に過剰に苛立ちを感じてしまうことがあるのです。自分自身の体調の変化が起こりやすい時期を把握して、その時期には特に無理をしないこと、なるべく体を休ませることを心がけていきましょう。
POINT5:おしゃべり、相談ができる環境を整える
心配や不安、あせりなどの感情は、その思いを誰かに話すことで解消することができます。また、自分が抱えているストレスを客観的な視点から捉えるためにも、おしゃべりのできる場を持つといいでしょう。
身近にいる友人や家族は、最も話しやすい相手でしょうし、地域の子育て支援センターの子育てサロンなどの場を利用してもいいでしょう。
抱えている問題が大きすぎたり、何度話してもストレスが解消されない、問題が解決できない場合には、専門家に相談するとよいかもしれません。たとえば、地域の保健センター、女性センター、男女共同参画センターなどに、育児中の方の悩みに対応する相談窓口がありますので、利用してみるのもよい方法です。
――自分の状態、抱えているストレスの状況に気づき、取り組める部分から改善してみるだけでも、心の状態はよりよくなっていきます。楽しい気持ちで育児をしていくためにも、ぜひ上の5つのポイントを参考にしてみてください。