健康そして地元のもの

デュカス氏の語る現在のフランスの食の傾向は日本同様、塩分・脂肪・糖質を気にする人が増え、健康志向が高まりを見せているという。パリにおいては、地元を活性化させようとする動きがみられ、定期的に直接生産者から野菜などを仕入れることが流行ってきているようだ。そうすることで、顔の見える食材をより新鮮な状態で受け取ることができ、地元の生産者にとっても力となり積極性のある動きに繋がっている。
アランデュカスのナチュールレシピ

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地方料理の複合化であるフランス料理の世界は1970年代からヌーベル・キュイジーヌと言われる現代フランス料理へ移行し、ソースや調理時間の単純化など、より軽い嗜好へ移った。そのフランス料理の行き着く先についてデュカス氏に質問をしたのだが、「『健康そして地元のもの』これしかない」とすかさず答えが返ってきた。

人間の原点である食は生きるための食であり、健康でより良い生き方をするためには地元のものをシンプルに料理し、食べることである。グローバルな視点で物事を見ることは大事であるが、グローバル化の波に本来の人間のあるべき場所や姿を見失ってはいけない。世界的人口増加に伴う揺れ動く食の事情、必要な食糧の供給量に達していない資源の不足問題。旬でない食材が一年中店頭に並び、輸入ものが大半を占める日本の市場で、安く外国産の食材を手にすることができる。
素材

素材重視を語るレストランは多いが産地や生産者、そして土まで見に行く料理人はほとんどいない

しかし、この現状について一度立ち止まり考える必要がある。地球の反対側から輸送費、時間をかけて運ぶ野菜に比べて、地元のものを地元で消費することは新鮮で安全な食の実現に繋がるほか、輸送コストやエネルギーも抑えられ、地球環境の保全にも有効である。魚にしても本マグロよりサバやイワシに目を向けて、養殖よりも天然のものを意識してみること。自分の近くにある大切なものを見落とさないように「旬のもの、地元のものを味わう」ということである。

こうした考えはデュカス氏の料理が常に「何を食べているかがわかる料理」であることと全くもってリンクしている。