これがラテン音楽だ!
ラテンミュージックの躍動感は人生そのもの
ラテンミュージックといっても、私たちが想像する以上に多様なジャンルがあります。まず、ラテンミュージックを語るのに欠かせないのが、カリブの島国キューバ。日本でも50年代に一大ブームを巻き起こしたのがキューバのマンボでしたし、90年代末には映画のヒットと連動してブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの老練なミュージシャンたちが脚光を浴びました。今なおラテンといえば、キューバ音楽がその代名詞になっています。
カリブ海には他にも、ジャマイカのレゲエ、ドミニカ共和国のメレンゲ、トリニダード・トバゴのカリプソなど、独自のリズムが数多く存在します。それらはすべて、アフリカから連れてこられた黒人たちの音楽がラテン流に発展していったもの。アフロ・リズムならではの陽気で大らかな音楽が楽しめます。
カリブから南米大陸に移動すると、音楽はさらに多様化します。もっとも大きな音楽世界が広がるのが、世界最大の音楽大国ブラジル。サンバやボサノヴァといったリズムは日本でもおなじみ。ブラジル音楽と意識せずに楽しんでいる方も多いことでしょう。それ以外にも、地方に行けばフォホーやアシェーなんていう野性味溢れるリズムにも出会えますし、セクシーなダンスが話題になったランバダも、もともとはブラジルのローカル音楽のひとつでした。
隣国のアルゼンチンは、また少し雰囲気が変わります。なんといっても哀愁の調べと妖艶なペアダンスを繰り広げるタンゴ。そして先住民音楽を発展させたフォルクローレが両巨頭。このフォルクローレは、ボリビア、ペルー、エクアドルといった国でも独自に発展し、アンデス音楽の代名詞となっています。
南米の北部にあるコロンビアも、実は隠れた音楽大国。ここから生まれたクンビアは、中南米だけでなく世界中に広まりました。ベネズエラに行けばホローポというマラカスが大活躍するワルツが盛んで、あの「コーヒー・ルンバ」もベネズエラ生まれ。パラグアイにはヨーロッパ風のハープ音楽が多く、ウルグアイにはカンドンベといわれるパーカッションで構成されたアフロ系リズムもよく演奏されます。
また、ずっと北上してメキシコまで行けば、マリアッチといわれる楽団形式で演奏されるランチェーラというラテン歌謡や、アコーディオンやブラスバンドで演奏される北部の音楽ノルテーニョも特徴的。
いずれにしても、これだけ音楽が発展するということは、その土地に住む人々が欲しているから。ラテンアメリカに行けば、その感覚も体感できるはず。町中には笑顔とおしゃべりと音楽が溢れ、ちょっとしたパーティーではみんな一丸となって踊るし、コンサート会場では誰もが歌手に負けないくらい大声で歌うのです。貧しくても辛いことがあっても、彼らはとにかく前向きに生きている。その支えがラテンミュージックであり、そんな彼らが作るからこそ愛とエネルギーに溢れた音楽が生まれているのです。