幸せをつかむためのバイブル

ブレイクスルー

 

各章の最後に歌川さんがちょこっとずつ文章で書いて捕捉しているように、この長編漫画には、ゲイとして生きていくうえでものすごく大事なことが、たくさん詰まっています。ペロくんの奇跡のような成長ぶり(ブレイクスルー)は、きっと読む人すべてに少なからず感銘を与えると思います。

僕らの人生(ゲイライフ)には、いろんな「答えのない問い」があると思います(伏見さんが『百年の憂鬱』で書いていたのもその一つです)。ペロくんは、歌川さんの絶妙なアドバイスのおかげもあって、自ら体を張って、果敢にそんな問いに挑戦し、見事に、彼だからこその(そして誰もが認めるような)答えを得た人なのです。彼の情熱とか勇気、行動力には惜しみない拍手を贈りたくなります(その原動力が「好き」という気持ちだったところも素晴らしい)

ブレイクスルー

 

ちなみに、漫画のタイトルになっているブレイクスルーとは、辞書で引くと「困難や障害を突破すること。また、その突破口。」と説明されています。ビジネスなんかでも使われる言葉みたいですね。僕がブレイクスルーと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、ミュージカル『RENT』です。家賃(RENT)もろくに払えないほど貧しい芸術家たちが主人公で、ゲイだったり、当時まだ死の病だったHIVに感染していたりして、ともすると絶望してしまいがちな状況のなかで、素晴らしくキラキラと前向きに生きる姿が、世界中を感動させ、異例のロングランヒットを記録し、ブレイクスルー・ミュージカルと絶賛されました。

この歌川さんの『ブレイクスルー』は、そんな『RENT』と同様、明日が見えない人にとっての福音の書であり、幸せをつかむためのバイブルのような本になりうると思います。

それから、『ブレイクスルー』の上巻には、今まで性悪キャラとして登場していたキミツくんと歌川さんの友情秘話を明かすエピソードも収録されています。(こちらもまた違う意味で泣けるお話です。そして、歌川さんの人生の壮絶さがまたひとつ明らかにされる、衝撃的なお話でもあります)

東日本大震災と原発事故が日本の未来に暗い影を落とし、ゲイシーンでもさまざまな悲しい出来事があり、将来に希望を見出せなくなりがちな今、この本こそが、もしかしたら現状を切り開いていくヒントをくれる最高のテキストになるかもしれません。