ストレス/ストレスフリーの思考術

不毛な会話をグルグル繰り返す人の「ゲーム」の罠(2ページ目)

「この人と話すといつも話題が後ろ向き」「最後に嫌な後味が残る」という場合、相手の会話の「ゲーム」の罠にはまっているのかもしれません。心理学用語としても重要な「ゲーム」とは、どんな特徴を持つ会話なのか、その罠にはまらないために必要なことをお伝えします。

大美賀 直子

執筆者:大美賀 直子

公認心理師・産業カウンセラー /ストレス ガイド

なぜ「ゲーム」を繰り返してしまうのか? 

game3

「やっぱりダメ」という信念から逃れられない

このように不毛で発展性のないゲームにはまり、双方がイヤな気持ちで会話を終える例は、あちこちで見られるのではないかと思います。では、どうしてこんなゲームを仕掛けてしまうのでしょうか? 

自分自身への肯定感が薄く、充実感を持った経験が非常に少ない人は、自分や他人に対する否定的な感情の方に深くなじんでいます。自己否定感の強い人は「自分はダメだ」という信念、他者否定感の強い人は、「自分は正しく、相手が悪い」という信念、自他否定感の強い人は、「自分も相手も、ろくなものではない」という信念を持っているのです。

その信念を他人と会話のやりとりで確認することによって、「自分の信念が間違えていないと証明したい」という思いがあります。また、否定的であっても他人とコミュニケートすることで孤独感から逃れられます。なじみのある否定的な会話を交すことで、充実した時間を過ごすことができるのです。

「ゲーム」に乗らない方法、シャットアウトする方法 

game4

居酒屋は今日も「ゲーマー」がとぐろを巻く

ゲームの流れに乗ってしまうと、「やっぱり自分はダメだ」「やっぱり自分は正しく、相手が悪い」「やっぱり自分も相手も、ろくなものではない」というように、いつも決まった結論で終わります。

したがって話しかけられた側は、相手のゲームに乗せられないように注意する必要があります。

それには、まず冷静になり、会話の流れを見極めることです。同情や同調をしてしまうと、ゲームの罠にはまりっぱなしです。イライラして怒りをぶつけると、「ほらやっぱり(自分は)(相手が)ダメなんだ」と、一気に否定的な「結末」に持ち込まれてしまいます。

ゲームに乗らないためには、「どうしてそう思うの?」「あなた自身はどうしたいの?」「なぜそうなったの?」というように、論理的な応答で対応するのがいい方法です。聞き手が毅然と対応することで、ゲームは行き詰っていくからです。

また、うまくゲームをシャットアウトするのもいい方法です。時間無制限でゲームを続けていると、存分にゲームにつき合わされ、あげくは「結末」に持ち込まれてしまいます。それを防ぐためには、自分からゲームを終わりにしなければなりません。

たとえば、「う~ん。私にはよくわかんないなぁ。ごめんなさ~い」というように、真剣にとりあわない。「そろそろ電車の時間だから、もう帰らなきゃ」というように、会話の途中で退場してしまう。「そうだ! 先週、あの映画観にいったんですよね。どうでした?」というように、会話をすり換える。このように、いろいろな方法でゲームを終わらせるよう、試みてみましょう。

自他肯定感があればゲームは仕掛けない 

game5

幼少期からの強い否定感も意志で変えることができる

本来「自分も他人もOKなんだ」という自他肯定の人生態度を持っていれば、自分にも他人にも否定的にならず、ゲームのような会話を求めることもありません。

しかし、「自分のままでいい」「自分も他者も信頼できる」という実感を得られないままで生きていると、自己否定感、他者否定感、自他否定感がゆがんだ信念となって、心の中に住み続けてしまいます。

すると、他人との何気ない会話をゲームにすり替え、ゆがんだ信念を再確認しながら、他人と関わろうとしてしまうのです。「信念」になった強い否定感を変えるのは容易ではありませんが、意志さえあれば可能です。興味のある方は、「交流分析」という心理学関連の書物を紐解いてみるといいでしょう。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます