労務管理/就業規則の基礎知識

定年後の継続雇用制度をどう設計する?(2ページ目)

超高齢化社会です。企業の人事労務管理においては、その状況を踏まえたマネジメントが求められています。定年を迎えた従業員の再雇用に欠かせない知識・実務上の勘所を本記事でしっかり押さえましょう。

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド

再雇用の場合、労働条件をどうするか?

■労働条件の決め方
再雇用の労働条件は、従業員の希望を踏まえモチベーション維持・向上が図れるものとしたいですね

再雇用の労働条件は、従業員の希望を踏まえモチベーション維持・向上が図れるものとしたいですね

再雇用後の「労働条件」は、次の項目について検討していきます。

  1. 対象者が貢献できる職務の再設計をする
  2. 賃金を再雇用前と比べていくらにするのか?
  3. 労働時間をどうするのか?
1.職務再設計について
再雇用前と同じ職務内容をすることとなった場合、賃金や労働時間を下げると合理的な説明がつかない場合があります。この場合は対象者の仕事における役割責任などを明確にして再設計してみてください。リーダーとしてではなく、後進のリーダーを助言する職務としたり、技術職であれば技術の伝達、今までの人脈を活かした営業などに活用することを考えてみるとよいでしょう。

要は、その業界その企業ならではの職務を洗い出し再構築してみることです。再雇用の前、50代中ごろに一度職務の再設計(役職定年制など)をしておくと運用が容易になります。

2.賃金について
賃金は対象者が最も関心が高い労働条件です。再雇用は労働条件が一回リセットされ、一般的には職務を再設計することで賃金を低下させることになります。ただし、企業によっては必ずしもこれによらず、再雇用後も賃金をほぼ同額支払うこともあるでしょう。企業にとって貢献度合いが著しく顕著な場合は、定型的なパターン(賃金減額)の処遇をすることはむしろマイナスに働くこともあるからです。

3.労働時間について
賃金と関連しますが、職務の再設計をするということは、働く日数、労働時間なども当然変わってくることになります。再雇用後は、週の労働日数を減らす。また一日の労働時間を所定労働時間より短くするなど、パートタイム的な働き方も考えられます。

これは、社会保険への加入の有無にも影響しますので、年金、雇用保険からの給付金等に影響がでます。モデルパターンを説明し必ず収入額のシミュレーションをして理解を得ることが欠かせません。

人事評価をどうするか?

定年後再雇用された場合、人事評価をしない企業も見受けられます。「65歳まで昇給なし、賞与なしの同一条件」といった場合です。これでは、従業員側のモチベーションの低下が考えられます。定年前の評価は、業績、態度、能力など様々な評価項目があったことでしょう。再雇用の基準でも人事評価を入れることが考えられますが、再雇用後は、現役社員へのサポート役などの役割を明確にし、現役社員用とは異なる評価項目で評価をしていくとよいでしょう。

再雇用者の雇止めが認められる条件とは?

再雇用者を雇い止めする場合、特に注意が必要です。高年齢者雇用安定法上は、60歳定年者は、65歳までの雇用確保措置が義務づけされています。1年ごとの更新をしていく場合などでは、更新の基準をクリアーできないような場合は更新ができません。この場合は契約更新30日前までに、更新不可の根拠を示し(更新の際の基準に満たないなど)雇い止めの予告をすることが必要になります。

契約期間の途中での解雇はどうでしょうか。昨今の経済化では、現役従業員に対し希望退職、整理解雇などでリストラ(雇用調整)をせざるを得ない企業も見受けられます。この場合定年後再雇用者の雇用確保との兼ね合いがあります。定年後再雇用者に対しても同様に雇用調整をすることが当然考えられるわけですが、ここは慎重に進める必要があります。残契約期間中の賃金額などの損害賠償を請求されることも考えられるからです。実務上は、相応の金銭補償などで円満な解決などを検討されるとよいでしょう。

公平性を高めるための勘所(まとめ)

最後に公平性を高めるためのまとめをします。

1.自社としての再雇用制度を、全従業員に周知・理解させることが第一歩
(自社の人事制度をオープンにする)

2.再雇用基準を満たした際には再雇用となるが、労働条件(労働時間・賃金)は定年前と変更することがあること(希望通りの労働条件とはならないことがあることを周知させる)

3.再雇用基準を、最初に緩く設定し運用すると、それが労使慣行になり不利益変更などのトラブルの基となる為、最初の基準はハードルを高くするのも一考
(労使で十分協議)

4.再雇用者への労働条件の明示をかならず実施
(労働契約書作成、再雇用者用就業規則交付、労働条件誓約書などを取り交わす)

以上です。法令順守も大切ですが、再雇用者に高い役割意識をもって活躍してもらうためにも自社の制度を今一度チェックしてみましょう。

<関連記事>有期労働契約の雇止めの留意点

<関連資料>改正高年齢者雇用安定法Q&A(厚生労働省)



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