メンタルヘルス/その他の心の病気

思考流出? 「自分の考えが人にバレてしまう」病気

日常生活上、心の平穏は些細なことで乱されてしまうことがあるもの。しかし、思考に現実的にはありえないような非合理性が増している場合、脳内環境が黄信号と考えた方がよいでしょう。今回は、自分の考えが他人に筒抜けになっていると感じてしまう場合、気をつけるべきポイントを解説します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

自分の考えが他人に筒抜けになっている

自分の考えが他人に、お見通しになっていると感じた事は無いですか? 思考に不合理性が強まっている場合、脳内環境が悪化している可能性があります

人生には不安のタネが尽きることなく、日々、さまざまな事象が心の平穏を脅かします。予期せぬことが起き、物事がなかなか思い通りに運ばないことは日常茶判事かもしれませんが、多くの人にとってストレスになるのは何といっても人間関係でしょう。

時には、相手の表情一つでもストレスを感じてしまうかもしれませんが、その解釈に非合理性が強くなっている場合は要注意。「この人には自分の頭の中がバレているのではないか?」「考えが筒抜けになっている気がする……」といった気持ちが抑えられないような場合は、心の病気を考える必要があるかもしれません。

今回は、自分の考えが他人に漏れていると感じてしまう時に、気をつけたいポイントを詳しく解説します。

他人はあなたが何を考えているか、あまり気にしていないもの

人は他人の内面よりも、外見に注意を向けやすいもの。例えば昼食抜きで机に張り付いたまま、何とかノルマをこなそうと頑張っている人がいるとします。その人が「あー、お腹が減ってツライ。誰か差し入れでもくれないかな」と思ったとします。でも、隣に座っている人はそんなあなたの心の中などわからず、「仕事頑張ってるなー。今度ランチご馳走してくれないかな」などと、自分の方の都合で考えるものです。

このように相手は自分の考えがわからないし、また、自分も相手の考えがわからないから、対人関係上のトラブルがしばしば生じるのだと思います。

もっとも、相手の気分が良いか悪いかは、顔の表情などで、ある程度見当がつきますが、相手が正確に何を考えているかを外見から判断するのは、人間には無理なことでしょう。従って、普通に考えれば、自分の考えが相手に、特に見知らぬ相手にまで筒抜けになるようなことは起こりえません。それでも漏れていると強くと感じてしまう場合は、自分の思考に非合理性が生じていると考えるべきです。

非合理性が強まっている場合、思考流出の可能性も……

もしも自分の考えが相手に読まれているという考えが湧いてしまったとしても、「そんなはずはない。当たり前に考えれば、自分の思い過ごしだ」と考えることもできて、日常生活上で特に支障が無い場合、そのまま様子をみるだけで良いと思います。

ただ、思考に非合理性が高じている場合は要注意。もしも、そのちょっとした観念が揺るぎない信念となって、常に頭を占めるようになってしまった場合、一種の妄想症状だといえます。「自分の思考が相手に全て分かっている」という思い込みは、「思考流出(thought broadcasting)」と呼ばれます。

自分の考えが漏れているという思い込みのせいで、仕事に集中できなくなったり、対人関係で深刻なトラブルが生じてしまったりと、日常生活上で深刻な問題が生じている場合、脳内環境の悪化が進んでいる可能性があります。

思考流出の場合は、他の症状にも要注意! 

思考流出は一種の妄想症状ですが、妄想症状が起きているということは、脳内で神経伝達物質ドーパミンの働きに問題が起きている可能性が考えられます。その場合、思考流出以外の精神症状も生じている可能性があります。

例えば、もしも、「おまえの考えは筒抜けになっているぞ」といった幻聴がある場合には、統合失調症の可能性も出てきます。こうした場合、脳内環境を元に戻すため、抗精神病薬などによる薬物療法を、すぐに開始すべき状況である可能性もあり、すぐに精神科(神経科)を受診する事が望ましいです。

大部分の人は、単にそんな気がするだけだろうと思いますが、思考の不合理性には、自分ではなかなか気付かないもの。もしも他人から何か自分の不合理性を指摘された場合、聞き流さずに、よく考えるべきです。まずは、充分な睡眠、栄養バランスの取れた食事で、休養もしっかり取り、心身の疲労を取り除きましょう。それでも、その観念から生じる不安や焦燥感が強まっている場合は、是非、精神科(神経科)を受診してみることもご考慮ください。 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます