「スイスアーミーナイフ」と呼ばれているように、もともとはスイス陸軍のためのナイフ(ソルジャーナイフ)として生まれたという経緯がある。ビクトリノックスのソルジャーナイフは、1891年以来多少のマイナーチェンジを加えつつ、スイス陸軍に今も採用され続けている。

その他の分野では、 NASA のスペースシャトル乗組員の標準装備品に選ばれるなど、ビクトリノックスでは様々なプロの現場で使われるマルチツールを作り続けている。こうした背景もあり、ビクトリノックスのマルチツールからは「武骨」、「プロ」といった、やや硬派なイメージがどうしてもつきまといがちだ。そんな中カジュアルなマルチツールがお目見えした。

日本発のデザイン

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「VICTORINOX TOMO DESIGNED BY ABITAX TOKYO」。これまでのマルチツールの常識を大きく変えるスクエアスタイル

TOMO (トモ)」という名の今回のマルチツールをデザインしたのは、アビタックスの山口和馬氏。日本人がデザインを手がけるというのは、永いビクトリノックスの歴史の中でも初めてだという。アビタックスでは、携帯灰皿、タグライト、ストラップ、カードケースなどポップな色調のプロダクトを数多く世に送り出している。

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「VICTORINOX TOMO DESIGNED BY ABITAX TOKYO」 全7色。各2940円

ビクトリノックス・ジャパン社が山口氏を訪れ、新たなマルチツールの企画について相談したところ、山口氏からこれまでのトラディショナルなアーミーナイフから脱却するためには「モダンデザイン」を積極的に取り入れてみてはどうかとアドバイスされたという。この時、山口氏はこれが参考になると一冊の本を手渡した。それは「ラミーのすべて」という本だった。

ラミーも当初はトラディショナルなペンを作り続けており、ドクターラミー氏の代になったとき、他のペンメーカーと差別化する手段としてモダンデザインを採用した。その経緯がまとめられた本である。確かにビクトリノックスもラミーの当初の頃のように、商品全体からはやはりトラディショナルな雰囲気というものが感じられる。業界は違えど、ある意味似た境遇であるとも言える。

これまでのマルチツールにないフォルム

山口氏が今回デザインしたフォルムは長方形というスタイル。これまでのマルチツールは手の握りやすさなどを考慮して丸みを帯びた形状だった。なぜ、長方形スタイルにしたかというと、ナイフという記号を極力排除するためだという。つまり、マルチツールっぽく見せないということだ。アーミーナイフやマルチツールは、どうしても男性が使うものというイメージがある。

今回の「TOMO」では、男性だけでなく、これまでマルチツールをあまり手にしたことがなかった女性にも自然にとってもらえるようにするためナイフの記号をなくしたという。ベースとなっているのは「クラシック」というコンパクトなタイプ。
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ベースは「クラシック」タイプだが、全く別ものに仕上がっている

片側からはナイフとやすり、そしてその反対側からハサミが出てくる。
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小さなハサミはバネが仕込まれていて、切りやすい

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ナイフとやすりの側だけ長方形の一部が凹んでいるので、間違わずに取り出せる

私は、ベースとなっている「クラシック」を2つ所有して、日々の生活でよく使っている。一つはデスクの壁に画鋲で付けて使い、もうひとつはキーホルダーに付けて日々持ち歩いている。

最もよく使うのが爪切りとして。このハサミを使うと爪がキレイに切ることができる。一般の爪切りのように切った爪がどこかへ飛んでいってしまうこともないので、とても重宝している。また、出張の時はスーツケースに必ず入れて旅行中のちょっとしたものを切るときに活用している。

さて、商品名の「TOMO (トモ)」は「友」、「共」から付けられている。そもそもビクトリノックスのマルチツールには、「Your companion for life」というキャッチフレーズがある。これは「いつでもあなたと共にあるビクトリノックス」という意味。「Tomo」は、まさに友人の様に寄り添うというビクトリノックス本来の考え方にぴったりなネーミングだ。今回、日本のデザインということで、日本的な響きのある言葉にしたという理由もあったそうだ。


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