セクシュアルマイノリティ・同性愛/映画・ブックレビュー

それでも恋はやめられない:伏見憲明『百年の憂鬱』(5ページ目)

夏ももうすぐ終わりですね。HOTなSUMMER LOVEに夢中なアナタも、失恋してマジブルーなアナタも、セミの声を聴きながら無常感にひたっているゴトウのようなアナタも、超弩級のせつない純ゲイ恋愛小説を読んでみてはいかがでしょうか。きっとあのヒットソングのように、夏の胸キュンメモリーになるハズです。

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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じゅんとあさこの「お気に召すまま」

 

第54回 この先10年も?

『百年の憂鬱』が載った『すばる』が発売されてすぐ、伏見さんがママをつとめる「エフメゾ」に行きました。小説にいたく感銘を受けたという感想を伝えたかったのと、ユアンくんのモデルが誰だかすぐわかったので、どこまでが事実だったのか聞いてみたくなったからです(野次馬根性)。そこであの小説が、身近な人をモデルにしたフィクションではなく、私小説であることを知り、けっこうビックリしました。

僕なんてすでに、もう新しい恋愛を始めるパワーすらない(あのお祭り騒ぎを一からやるなんて、考えただけで気が遠くなりそう)と思っているのに、あと数年で50の大台に乗ろうとしている伏見さんがあんなにドラマチックな恋をしているなんて…スゴイ!と思ったのです。

お忙しいのにむりやり引き留めて、しばらく伏見さんと恋愛談義をさせていただいたのですが、僕が「ぶっちゃけ、今もダンナとセックスがあって…まだ恋愛が終わっていないんです。周りにはヘンタイ!と罵られるけど。でも、もしかしたら、ずっとこの記録を更新することに意味があるかも?とか思ってます」と言ったら、伏見さんは「その10年愛は貴重かもしれないね。小説に書いてみたら?」と言ってくださいました。

「二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ」という物語がなんのドラマにもならないことはよくわかっていて(ウチはうたぐわさんちほどミラクルな出来事に恵まれているわけでもなく、わりと淡々と過ごしているので)、こうして時々起こるささやかな出来事を細々と綴っていくのにも苦労しているくらいなのですが、たぶんあと10年くらいしたら、小説に書けるくらいの重み(年輪って言うんでしょうか)が出てくるんじゃないかなあ…と漠然と思っています。

僕の理想は、この先10年も、20年も、恋愛(セックスを含む関係)が続くことです。昔、おじいちゃんとおばあちゃんが仲よく手をつないでウキウキ歩いていくという洗剤のCMがありましたが、ああいうイメージです。そして、ニューヨークみたく同性婚が認められたら「この日が来るのを待ち望んでいました」と涙ながらに区役所で語るのです(女優のように)

でもしかし、恋の魔法はそこまで持つだろうか、もし二人の間にセックスがなくなったら、果たして(本当の意味での)パートナーシップが続いていくだろうか…というのが、正直、不安に思うことではあります。まあ、考えてもしかたないし、行けるとこまで行くしかないって感じですけど。

考えてみれば、伏見さんが生き生きと伝えてくれたように(そしてタックさんが『二人で生きる技術』で書いていたように)、数十年前に比べれば、男どうし二人で暮らせることのなんとありがたいことか…と思うわけです(今だって、地方では厳しかったりします)。僕らの今のこの幸せにつながる道を切り開いてきた先人たちに、あらためて感謝したいと思います。
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