まずは「建物の価値の減少」を知る


敷金トラブルが発生するのは、使った部屋の損耗分を修繕するために必要な費用を貸主か借主か、いずれが負担するのかが曖昧であるがためです。もし、「○○の修繕は借主、△△の修繕は貸主」とはっきり決められていれば、トラブルになることは少ないでしょう。

前回お話したように、経年変化・自然損耗分を貸主、故意・過失による損耗分を借主と一般的に言われていますが、さらにどの損耗が経年変化なのか過失なのか、を明確にしないとやはりトラブルは発生してしまいます。
そこでガイドラインでは、賃貸借契約を交わすときにより具体的な条件を明記しておくことが望ましいとしています。

そして示されているのが、賃貸住宅の価値の減少です。

グラフ1

借主の原状回復義務はどの部分か?



これは、賃貸住宅が年数とともに建物価値が減少していくのに伴い、どの部分を誰が負担するのかを表しています。

新築時の価値を100%とすると、Aは退去するときに経年変化・通常損耗によって価値が減少する分。これは、賃貸借契約の性質上、もともとの賃料に含まれている分に相当するため、借主が負担するものではなく貸主の負担によって修繕する分と考えられます。

またBは、入居者の故意・過失あるいは善管注意義務違反による減少分。通常の使用で暮らしていれば発生しなかったような損耗を修繕するための費用で、例えば窓ガラスについた結露をそのまま放置してしまったために、カビが発生してしまった場合などは、入居者が結露を掃除していればカビの発生を防ぐことができたので、この修繕費用負担は入居者となります。あるいは、家具を引きずったためについてしまった床の傷やペットを飼ったためについた傷などは借主の負担です。

さらにGのグレードアップとは、退去時に古くなった設備などを最新のものに取り変えるなど、建物の価値を高めるような修繕のことで、これはもちろん建物の所有者である貸主の負担です。

A、B、Gといった区分は、必ずしもはっきりと区別できるケースばかりではありません。例えば、借主が通常の暮らし方をしていても発生する損耗分はAに当たりますが、さらに借主の善管注意義務違反(善良な管理者として部屋を管理する義務を守らなかったなど)によって、その被害が拡大してしまった場合には借主にもある程度の修繕費用を負担しなければならなくなります。これがA(+B)の部分です。
同様に、A(+G)は、通常の使用による損耗分を修繕するタイミングで、さらに建物の価値をアップさせるために大がかりな修繕をする場合。これはもちろんすべて貸主の負担となります。


このようにガイドラインでは、一般的な修繕に対する考え方を示していますが、あくまでも個別物件対応であり、損耗の程度や状態によって貸主・借主のいずれが負担するのかは判断されるというのが現状です。

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