長く住むほど、修繕費用の負担は少ない?
もうひとつ、ガイドラインが示している指標は年数との関係です。
Bのように原状回復義務が発生している場合、入居年数が1年の人と10年の人が、退去するときにまったく同じだけの修繕負担では不公平だという考え方です。なぜなら、1年入居よりも10年入居していたほうが、経年変化・自然損耗は大きくなるから。よって、長く住んでいた人ほど原状回復義務に対する負担割合が少なくなるのです。
例えば、耐用年数が6年の設備は、6年たてばその価値は新品のときより10%程度になっていると考えられますが、このように減少する直線にしたがって借主の負担割合は決定されるのです。
借主に原状回復義務がある場合(耐用年数6年または8年の場合)
もちろん、この考え方は新築物件に入居した時はスタートが建物価値100%ですから適用できますが、中古物件を借りた場合には、すでに入居するときに経年変化・自然損耗による分があり、同じようにはなりません。そこで、もし入居時点で中古物件であった場合には、先程のグラフをずらしてもともとの建物価値が何%だったのかによって、入居年数との関係を考えるように示唆しています。
新築時の設備の状態を実線とすると、中古で入居した場合には設備も古くなっていれば、その状態に合わせて点線のグラフのように左下にシフトする
こういった考え方も、対象となるものによってもちろん差はあります。例えば、畳やふすま、障子などは消耗品であり入居年数にかかわらず損耗も大きいもので、張り替えや交換もわりと容易ですが、フローリングなどは長期間の使用に耐えられるため、損耗があった場合には部分的な補修がなされるケースもあり、一概にそれぞれの耐用年数が決定できるものではありません。
あくまでも一つの考え方であり、修繕するときに借主が負担するのは、修繕する箇所の最小単位であると考えておくといいでしょう。フローリングの一部を引っ越しの際に傷つけてしまった場合、フローリングなら多少つぎはぎになっても一部の補修をするでしょうが、襖を破いてしまった場合にはつぎはぎの修繕ではなく、襖紙を貼り変えます。
また、壁紙も例えば借主の故意・過失により1部屋(あるいは1面)を貼り変える場合には、部屋全体の統一感が無くなってしまうからといって、すべての壁紙を張り替えることになったとしても、それは貸主がグレードアップさせるために行うことなので、借主がすべての分を負担する必要はなく、最小単位である1面(あるいは1部屋)の張り替え分だけを負担すればOKです。
もう少し具体的な例を、次回まとめてみましょう。
詳しい記事はこちら