労務管理/給与規定・賃金規定の基礎知識

社員の残業代を計算する正しい方法!基本給以外の手当ても確認

社員の残業代を計算する方法を解説します。給与計算で間違いが生じやすいのは時間外(残業)手当の計算。時間単価への換算方法は正しくできているでしょうか? 基本給だけを計算の基礎にすると間違いやすいので注意。具体的な計算例を挙げて解説します。

小岩 和男

執筆者:小岩 和男

労務管理ガイド

社員の残業代は給与計算ソフトの計算式で正しく割り出せていますか?

社員の残業代は正しく計算されていますか?

月給制従業員の時間単価の正しい計算方法を確認しておきましょう


多くの企業では給与計算ソフトを使用して計算されていますから、設定方法を変えて対応されたことでしょう。給与は従業員の生活に直接関わる問題。そのため給与担当者にとって、労働基準法などの法改正情報は常にチェックをして対応しなければなりません。

今回は、定例業務である給与計算(残業手当計算)が正しくできているか、適正な計算方法の解説です。企業実務では給与計算ソフトなどを使って自動計算することが多いですが、実はこの点が盲点になることがあるのです。ソフト導入時に設定されていた例示計算式を、そのまま使用して自社の計算をしていたりしませんか?もちろんこれでは正しい計算とは言えません。時間外(残業)手当を正しく計算するためには、計算方法に一定のルールがあるのです。今回の記事でしっかり確認をしていきましょう。

<残業代を計算する方法!社員の残業代を正しく計算する 目次>  

月給制の従業員は時給換算する!

給与計算ルールは【労働基準法】で定まっています。同法は、時間単価の考え方をとっています。パートタイマーやアルバイト従業員では、1時間当たりの時給単価が決まっていることが多く、単価の問題はありませんね。問題は正規従業員の時間単価をどう計算するかです。正規従業員は月給制のことが多く、これを時間単位に換算する必要があるのです。以下で解説します。
 

社員・月給制従業員の残業時給の計算方法

月給制の場合の時給単価は【月給(分子)÷月の所定労働時間数(分母)】で計算します。
 

月給(分子)のルール……基本給以外の手当てを確認

月給といっても、構成は基本給もあれば各種手当もあります。なにが入るのでしょうか。実際の給与計算で、基本給だけを計算の基礎にしていませんか?時間外(残業)計算では、基本給部分以外の手当も月給に入ります。ただし、労働基準法では次の手当は計算の基礎にしない、とされていることをご存じでしょうか。
 
  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

皆様の企業では、上記の手当などは計算上の月給(分子)から除外されていたでしょうか。検証してみましょう。上記手当は、労働とはあまり関係ない従業員個人事情による手当なので計算上の月給とはしないのです。
 

要注意!上記手当等でも月給に算入する場合あり!

一方で従業員全員に一律に支給するような手当は、上記に列挙されていても月給に算入するというルールがあります。この点間違えて計算してはいないでしょうか。次で確認してください。

1.家族手当
扶養家族数に関係なく一律に支給されている家族手当は、月給に算入しなければなりません。

2.通勤手当
距離にかかわらず一律に支給されている通勤手当は、月給に算入しなければなりません。

3.住宅手当
  • 従業員全員に定額で支給するもの
  • 住宅の形態ごとに一律に定額支給されるもの
    (例:賃貸住宅居住者には2万円、持家居住者には1万円)
等は、計算上住宅手当に該当しないので、月給に算入しなければなりません。

4.臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
あらかじめ金額の確定した賞与は、これらの賃金に該当しません。月給に算入することになるので注意しましょう。例えば年俸制をとっている場合、決定年俸の17分の1を月例給与とし、17分の5を2分して6月と12月に賞与として支給する場合です。ここは非常に誤解が生じやすいところです。
 

月の所定労働時間数(分母)のルール

月の所定労働時間数は毎月変動します。月によって30日、31日(2月は、28日、29日)と変動しますよね。そうすると毎月計算式が変わることになり計算が大変です。実務の世界では、年平均で月の労働時間数をカウントすることになっています。次の例示で説明します。

(例)1日8時間労働で、完全週休2日制、祝日、年末年始休日他がある企業(年365日)
  • 年間所定労働日数(就業規則等による)240日
  • 年間所定休日(就業規則等による)125日
  • 1日の所定労働時間数(就業規則等による)8時間
  • 1年間の所定労働時間 240日×8時間=1,920時間
  • 1か月平均所定労働時間数 1,920時間÷12ヶ月=160時間

1年間の所定労働時間1,920時間を12ヶ月で割って1月平均の所定労働時間数を上記プロセスで計算していくのです。上記計算例では160時間になりました。早速自社の1月平均所定労働時間を計算してみましょう。
 

実際に社員の残業(時間外)手当を計算してみよう!

■前記企業での具体例
月給制の従業員 A の月額給与内訳
  • 基本給:300,000円
  • 資格手当:20,000円
  • 家族手当:10,000円
  • 通勤手当:5,000円
給与合計:335,000円

時間外手当計算上の給与額は、320,000円
(基本給と資格手当は算入。前記、月給(分子)のルールにより家族手当と通勤手当は除外。)

320,000円÷160時間=2,000円
従って、従業員Aの時間単価は2,000円となります。

この従業員Aが10時間残業した場合
2,000円×1.25×10時間=25,000円
となります(1.25は、時間外労働の法定割増率)。

今回は、時間外単価の計算方法と時間外手当計算の基礎となる給与額について解説しました。自社の給与計算方法が正しく計算されているか検証してみましょう。また時間外手当の計算では、その他の法定の割増率についても正しく理解することが必要です。

いままで猶予されていた中小企業も、いよいよ2023年4月からは、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%以上となります。計算方法もさることながら、今まで以上に効率的な時間管理のマネジメントを考えていく時代がやってきているのです。

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