次世代薄型の主流の座を狙い、ソニーから“クリスタルLED”が名乗り!
ソニーが2012年CESに出品したクリスタルLEDディスプレイ試作機
有機ELテレビへの対抗馬として注目を集める存在が、ソニーが2012年米CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で試作機を公開した“クリスタルLEDディスプレイ”。これについて紹介しましょう。
「LEDバックライトのなんて当たり前。珍しくないじゃないの?」と思われるかもしれません。しかし、“クリスタルLEDディスプレイ”はLEDバックライトを使う液晶テレビとは別物です。有機ELと同様に、液晶、プラズマとは別の第三の方式、あるいはポスト液晶方式を伺う新しい存在と考えてください。
液晶方式の場合、自分で発光しないので、最初はCCFL(冷陰極管~蛍光灯のようなもの)、現在はLEDを光源として液晶パネルの背後、または両端、上下に設置しています。LEDの光を拡散板というもので液晶パネル全体に行き渡らせたり、あるいは映像に応じて部分部分を光らせたりして(ローカルディミング、またはエリア駆動といいます)、映像を描き出していました。
“クリスタルLEDディスプレイ”は違います。液晶の画素一つ一つが極小のLED光源を持っていてすべてが独立して光り、RGBのカラーフィルターとの組み合わせでカラー映像を描きます。ソニーが参考出品した試作機(フルハイビジョン55V型)の場合、RGBのLEDを約200万個ずつ合計約600万個使用しています。
ノイズも焼き付きもナシ。プラズマにはない多くの長所を持つ
「それって、もしかしてプラズマ方式に似てない!?」。その通りです。しかし、“クリスタルLEDディスプレイ”には、プラズマ方式にない数々の長所があります。プラズマ方式の場合、発光/消灯(オン、オフ)しかありませんので、サブフィールドといって一枚の画像ごとにRGBのセルが点灯する回数を変えて明るさを調節し、階調を作り出します。それに対して“クリスタルLEDディスプレイ”はLEDの明るさそれ自体をリニアに(アナログ的に)コントロールすることができるのです。
プラズマ方式にずっとつきまとった課題に「誤差拡散法」によるノイズの発生がありました。階調を作り出す上でビットの帳尻合わせをしなくてはならず、それを周辺の画素に追いやることで映像(特に暗部)のザラツキになってしまったのです。
“クリスタルLEDディスプレイ”にはそうしたノイズの発生要因が最初からありません。プラズマテレビが克服できなかったもう一つの課題「焼き付き」の心配も、“クリスタルLEDディスプレイ”にはありません。
コントラスト、水平視野角、消費電力、すべてで従来の液晶方式を上回る
従来の液晶方式に対しての優位はあるのでしょうか。液晶方式に限らず、薄型テレビの歴史はコントラスト、特に黒浮き、加えて暗部階調との戦いだったといっていいでしょう。ことに間接発光の液晶方式の場合、さまざまな技術革新を経たとはいえ、液晶越しに平坦な光源を目視している違和感がありました。“クリスタルLEDディスプレイ”は画素毎に明るさが変化し暗くすべき箇所は光りませんので、従来の液晶に感じたステンドグラスを見ているような違和感が払拭されそうです。
もう一つ、液晶方式に対して圧倒的に優れるのが水平視野角。ソニーの試作機の場合、何と180度。つまり真横から見ることが出来るのです。消費電力も同様でパネルモジュールで約70W以下になっています。
では、今後のポスト液晶を担うのはどちらなのでしょうか?